2021.06.28
純粋なる映画表現の追求、強烈な色彩感覚
筆者がアルジェント作品に心惹かれる最大のポイントは、リアリティを無視した“純粋なる映画表現の追求”。『サスペリアPART2』には、それが横溢している。ヘルガの部屋には、なぜ気味の悪い絵画が無数に飾られているのか。主人公のマーク(デヴィッド・ヘミングス)が襲われるとき、犯人はなぜ子守唄のテープをわざわざ流すのか。ジョルダーニ教授が襲われるとき、なぜ何の脈絡もなく機械仕掛けの人形が登場するのか。理由はただ一つ、その方が面白いから。その方が観客の脳裏に残るから。ザッツオール!
「話として支離滅裂だから、カットした方がいい」という周囲の意見もあったという。だがアルジェントは頑としてそれを聞き入れず、論理性よりも幻想性を重視した。筆者の敬愛するライターの川勝正幸氏は、「多少の辻褄よりは目の快楽」という名言を残しているが、『サスペリアPART2』はまさに「快楽」に満ち満ちている。サイコーではないか。
『サスペリアPART2』© 1974 MEDIASET
「目の快楽」でいえば、強烈な色彩感覚もアルジェント作品の魅力だろう。原題の「深紅」(Profondo Rosso)をなぞるが如く、『サスペリアPART2』はあらゆる場面で“赤”が氾濫している。映画は血糊のついたナイフが床に落ちるところから始まるし、心霊学会の会場には真っ赤なカーテンが引かれている。そして、人体に突き刺さったナイフの鮮やかな血の赤。アルジェントも独特の色使いにはかなり自覚的だったようで、こんなコメントを残している。
インタビュアー「この世界で色はどのような役割を果たしていますか?」
アルジェント「色は、映画にトーンや魂を与える基本的な道具なんだ」(ダリオ・アルジェントへのインタビューより引用)
純粋なる映画表現の追求、強烈な色彩感覚。映画にこれ以上何を求めよう?しかも『サスペリアPART2』には、初見の方は驚愕すること請け合いの映像トリックが仕掛けられている。シネマでしか表現し得ない映像体験に、我々も身を浸らせよう。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
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配給:TCエンタテインメント
提供:TCエンタテインメント/フィールドワークス
6月18日(金)~7月1日(木) シネマート新宿、シネマート心斎橋にて2週間限定上映
© 1974 MEDIASET