『満ち足りた家族』豪華キャストが食卓を囲み紡ぎあげる、現代家族の呪縛と崩壊

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2025.01.21牛津厚信

“満ち足りた家族”に降りかかる試練

　高級店でディナーが始まる。テーブルを囲むのは、兄弟役のソル・ギョングとチャン・ドンゴン、これにそれぞれの妻役（クローディア・キム、キム・ヒエ）といった錚々たる顔ぶれである。

　兄ジュワンは絵に描いたような利益主義型のやり手弁護士で、殺人犯の弁護も金次第で平気で引き受ける。そんな兄を軽蔑しながら育った弟ジェギュは清廉潔白な小児科医で、手術代が未払いになりそうな患者でも決して見捨てない熱い心情を持った人間だ。

　そんな真逆の性格の彼らは、月に一度、家族であることを確認するかのように高級店のテーブルを囲む。近況報告や、弟家族に任せっぱなしの母の介護を労う意味もあるのだろうが、特に真心のこもったやりとりがあるわけでもなく、当たり障りのない言葉が宙を舞うのみ。

　この形ばかりの憩いの席で、世間を騒がせた先の暴走殺人の話題が持ち上がる。全くの他人事かと思いきや、兄はこの容疑者の弁護を請け負っており、弟は事件によって負傷した少女の担当医師として関わっていた。真っ向から交差する二人の人生。でもこれはまだまだ序章に過ぎない。やがて舞い込む衝撃的な出来事をきっかけに、ディナーを囲む大人たちは、誰もが想像もしなかった過酷な運命と決断に絡みとられ・・・。

西欧小説を韓国流へ巧みに翻案

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