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『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』時代の0.5歩先を予見したフェイク捏造ブラックコメディ

(c)Photofest / Getty Images

『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』時代の0.5歩先を予見したフェイク捏造ブラックコメディ

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クリントン政権のスキャンダルを予見



 映画は作り手がまったく想像しえないところで、時として予見者になる。それも何十年か何百年先の未来ではなく、現在地のほんの半歩先を言い当ててしまう。『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』(97)はその筆頭に挙げられるべき快作だ。


 1997年のクリスマスに全米公開されたおり、よく出来た政治風刺コメディだと、人々はこの映画に一定の評価を与えた。しかしそれからひと月も経たないうちに、当時のビル・クリントン大統領のセックススキャンダルが報じられ、8月になってようやく彼が事実を認めると、3日後、アフガニスタンやスーダンへの空爆が行われた。このあたかも話題を逸らすかのようなやり口に、人々はすぐさま本作を引き合いに出し批判の声を強めた。「映画の展開そのまんまじゃないか!」と。


 さらに、同年12月には、イラクでの空爆作戦が展開されたためにこのスキャンダル問題に関する下院審議が延期され、またも本作との共通性が取り沙汰された。


『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』予告


スピンドクターと映画製作者が事実を捏造する



 原作はラリー・バインハートが1993年に発表した"American Hero"という小説。映画化にあたってはまずヒラリー・ヘンキンが脚本執筆し、次にピューリッツァー賞受賞の脚本家デヴィッド・マメットが腕を振るう過程で、内容は原作から大きく変化を遂げた。ちなみにヘンキン&マメットは本作でアカデミー賞にノミネートされている。


 本作はまず「ワグ・ザ・ドッグ」というタイトルへの言及から始まり、「なぜ犬は尻尾を振るのか?それは犬が尻尾よりも賢いから。もし尻尾の方が賢ければ、尻尾が犬を振るだろう」という説明書きが続く。どうやらその言葉には「さほど重要でないもの(尻尾)が重要なもの(犬)に取って代わる」という意味が込められているらしい。


 物語の舞台は、大統領選もいよいよ佳境に差し掛かったアメリカ。この4年周期の最も大事な頃合いに現職大統領のセックス・スキャンダルが浮上し、明日には新聞ですっぱ抜かれて国民の知るところになるという。となると選挙の敗北は免れない。


 そんな最悪の事態に対処すべく、ホワイトハウスの職員たちは夜な夜な「あの男」を出迎える。過去にもいくつもの難題を陰で解決してきたベテランの揉み消し屋(デ・ニーロ)である。限られたメンバーにのみ打ち明けられたスキャンダルの詳細にいっさい動じることなく、余裕の表情すら浮かべた彼は、官邸スタッフに次々と対処法を指示。その上で、この一件から国民の目を反らすべく「映画業界の力を借りる」という案を思いつく。すぐさま敏腕の映画プロデューサー(ホフマン)に協力を求め、フェイクの紛争をでっち上げるというプロジェクトが始動していき・・・。




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