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『ウィキッド ふたりの魔女』ミュージカルの歴史にもリスペクトを捧げる理想の映画化 ※注!ネタバレ含みます

© Universal Studios. All Rights Reserved.

『ウィキッド ふたりの魔女』ミュージカルの歴史にもリスペクトを捧げる理想の映画化 ※注!ネタバレ含みます

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映画版で曲のインパクトも増大



 ミュージカル映画に求められる条件のひとつに、全体の心地良いテンポがある。通常のシーンが停滞してしまうと、ミュージカル部分が浮いてしまうからだが、チュウ監督の演出は冒頭から、カメラワーク、シーン転換の絶妙なタイミングで、一気に世界に没入させる。舞台作品の場合、客席の暗転によってステージが瞬間的に異世界と化すわけだが、この映画は観ているこちらの身体もオズの国に“引きずりこまれる”感覚を味わえる。


 ひとつ大きな不安だったのは、休憩を含む3時間の舞台版「ウィキッド」を、映画では前後編の2部作に分けたこと。しかも今回の前編だけで2時間41分だ。近年のミュージカル映画では『レ・ミゼラブル』(12)も2時間38分と長尺だったが、同作は舞台版と同じ物語を1本で描ききっていた。『ウィキッド ふたりの魔女』は明らかに間延びする予感があったものの、この冒頭はもちろん、曲と曲の間のドラマのテンポの良さで、余計な長さを感じさせない。むしろ展開が加速していく印象。後編は映画用の新曲も追加されるようなので、さらにノンストップな加速を期待できる。



『ウィキッド ふたりの魔女』© Universal Studios. All Rights Reserved.


 『レ・ミゼラブル』との相似点では、歌唱シーンの音源が挙げられる。通常のミュージカル映画では、歌唱部分はスタジオで別録音され、撮影時にキャストは口パクで演じることが常識(歌っていても、その音は録音されない)。その常識を覆したのが『レ・ミゼラブル』で、たとえば山の頂上のシーンでの荒い息遣いや、涙を流すシーンでの鼻をすすり上げる音がキャストの歌とともに収められた。音のクオリティ以上に、演技から歌唱へシフトする際の、キャストのリアルな感情を優先したわけだが、それが成功して感動を倍増させた。この『ウィキッド ふたりの魔女』でも撮影時の“生歌”をレコーディング。ただし『レ・ミゼラブル』の時代から進化した録音技術によって、演技の流れでの感情+クリアな音を融合。たしかに映画を観ながら、その両方を実感することができた。今後のミュージカル映画の大作は、この録音スタイルが基本になるだろう。


 2部作による収穫は、1曲、1曲のインパクトが大きくなったこと。「ウィキッド」は近年のミュージカル作品の中でも、曲のクオリティがハイレベルであり、一気に味わうのは惜しいほど。その意味で「ウィキッド」の中でも最も人気の高い、エルファバの曲「ディファイング・グラヴィティ」が、今回の作品で最高の見せ場として機能したのは、前後編に分けたことが要因。一気に描いていたら、ここまでの感動は生まれかった気がする。アリアナ・グランデとグリンダのキャラクターが完全一体化し、ピンク色の背景に包まれて軽やかに肉体が躍動する「ポピュラー」も、前編のハイライトとして脳裏に焼きついた。舞台版では体験できない映像ならではの演出も、「ディファイング・グラヴィティ」のダイナミックな飛行の他に、エルファバの崖の上での熱唱、スプリットスクリーンの効果的使用など全編で堪能できる。





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