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『ウィキッド ふたりの魔女』ミュージカルの歴史にもリスペクトを捧げる理想の映画化 ※注!ネタバレ含みます

© Universal Studios. All Rights Reserved.

『ウィキッド ふたりの魔女』ミュージカルの歴史にもリスペクトを捧げる理想の映画化 ※注!ネタバレ含みます

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アメリカ大統領選と多様性追求の偶然の相剋



 この『ウィキッド ふたりの魔女』が全米で劇場公開されたのは、2024年11月22日(他の多くの国もその前後での公開)。その直前の11月5日に、アメリカでは大統領選挙が行われ、ドナルド・トランプが第47代の大統領に当選していた。これも運命的である。トランプの政策のひとつが多様性の“後退”である一方、『ウィキッド ふたりの魔女』は、その逆方向のテーマを推し進めている。劇中でヤギのディラモンド教授は、大学の歴史学部長という名誉ある職に就きながらも、オズの国で動物たちが迫害され、共存できない現実を訴える。これはまさに、トランプ政権下における多様性の排除と一致する。時として、偶然にも映画が社会を反映してしまうケースがあるが、本作はその例として受け止めることも可能だ。舞台版のディラモンド教授は、ヤギの角を着けた人間の俳優が演じているが、映画版で本物のヤギの姿で描かれることで、差別を受ける切実さが際立つ。


 また舞台版では、大学でのグリンダの2人の親友が女性だったが、映画版では多様性に舵を切ったキャラクターに改変されている。エルファバ役にアフリカ系のシンシア・エリヴォを起用しているのも、作品としての多様性アピールだろう。グリーンの肌のエルファバは、メイクアップでどんな人種が演じることも可能で、もちろんエリヴォのミュージカル俳優としての実力があってのキャスティングだが、「外見で人を決めつけてはいけない」という作品のテーマが、エリヴォが演じることでさらに強化された。



『ウィキッド ふたりの魔女』© Universal Studios. All Rights Reserved.


 とはいえ、そのようなトランプ政権への反旗や、多様性といったメッセージは、あくまでも付随的。ミュージカル映画のファンにとって多様性は常識であり、『ウィキッド ふたりの魔女』の表現も鼻につくものではない。むしろミュージカル好きは、1939年の『オズの魔法使』から連なる、ひとつのワンダーランドの変遷、その幸福に浸る喜びが上回る。前述のMGMミュージカルへのオマージュに加え、『オズの魔法使』のラストでドロシーが赤い靴のかかとを3回鳴らしたシーンが、グリンダのある行動で再現されるなど、マニアックなネタが多数隠されている。舞台版「ウィキッド」のブロードウェイ初演キャストである、イディナ・メンゼル(エルファバ役)とクリスティン・チェノウェス(グリンダ役)の特別出演には感極まるし、作詞・作曲のスティーヴン・シュワルツがエメラルドシティの門番で登場したりもする。エンタメとしてハリウッド、およびブロードウェイの歴史に最大限の賛辞を贈っているのが、『ウィキッド ふたりの魔女』の功績ではないだろうか。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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『ウィキッド ふたりの魔女』

全国ロードショー中

配給:東宝東和

© Universal Studios. All Rights Reserved.

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