『オペラ座の怪人』あらすじ
パリのオペラハウスでスタッフたちに恐怖を与える傷ついた男、ファントム。彼は若い歌い手クリスティーンの教師をしながら恋に落ち、自分を求めるように切望するが、彼女の瞳は別の男を向いていた。裏切られたと感じたファントムは彼女を誘拐し、秘密の隠れ家に連れて行くのだった。
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近年は映画化まで時間がかかる名作ミュージカル
ロングランを記録した舞台のミュージカルは、当然のように映画化されてもヒットの公算が高い。ゆえにミュージカルの名作はことごとく映画になっているのだが、そのタイミングにはバラつきもある。
ミュージカル黄金期の時代の場合、『ウエスト・サイド物語』が舞台初演から映画化までが4年(1957年→1961年)。『サウンド・オブ・ミュージック』が6年(1959年→1965年)、『マイ・フェア・レディ』が8年(1956年→1964年)、『屋根の上のバイオリン弾き』が7年(1964年→1971年)とそれぞれだが、どれも10年以内と、比較的早いペースだった。
近年の有名な作品では、『ヘアスプレー』の5年(2002年→2007年 ※元々の映画は88年製作)のようにスピーディな映画化もあるものの、『シカゴ』が1975年→2002年、『レ・ミゼラブル』が1985年→2012年(※ミュージカル版の映画化として)と、ともに27年。映画化まで時間がかかるケースも目立つ。大ヒットミュージカルは映画に最適な題材である一方で、映像化の難しさ、また1970~1990年代はミュージカル映画がジャンルとして衰退していた現実もあって、映画化のタイミングがつかみづらかったのも事実である。
ミュージカル界のレジェンドである作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーの作品も、『ジーザス・クライスト・スーパースター』こそ、1971年→1973年と超速攻だったが、『エビータ』は1976年→1996年、『オペラ座の怪人』は1986年→2004年(※ミュージカル版の映画化として)、そして『キャッツ』は1981年→2019年と、初演から映画化までの時間は基本的に長かった。タイミングが難しいのだろう。
『オペラ座の怪人』予告
『オペラ座の怪人』の場合、ロイド=ウェバーは、1986年のロンドン初演から2年後の1988年、ブロードウェイでオープンした頃に、映画化のプロジェクトでジョエル・シュマッカー監督に相談をもちかけていた。シュマッカーによると「私の『ロストボーイ』(87)を気に入って、アンドリューからアプローチがあった」とのこと。B級テイストの吸血鬼ホラー映画というのが意外だが、ロイド=ウェバーは同作の音楽の使い方に感銘を受けたそうだ。そして1990年、ミュンヘンとプラハで撮影を行う手筈まで整った。
この最初のプロジェクトでは、『オペラ座の怪人』ロンドン初演のオリジナルキャストである、マイケル・クロフォードとサラ・ブライトマンのキャスティングが予定されていた。しかしブライトマンとロイド=ウェバーの泥沼の離婚劇もあり、映画化の話は中断。それから10年以上が過ぎた2002年に、ロイド=ウェバーとシュマッカーはロンドンでディナーを共にして、待望のプロジェクトを動かすのだった。