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『レイブンズ』変幻自在にたゆたう浅野忠信の永遠性を活写する

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

『レイブンズ』変幻自在にたゆたう浅野忠信の永遠性を活写する

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運命を貫く”カラス”をどう描くか



 その語り口は、一般的な人間ドラマや半生を描いた伝記モノに比べてかなり毛色の異なるものだ。中でも、深瀬の人間性を読み解く上で欠かせない「鴉」をどう描くかの面で、ギルの才気は静かに爆発する。というのも冒頭から彼は、漆黒の身体と大きな羽根を携えた特殊造形(百武朋による着ぐるみのクリーチャー)のカラスを登場させ、現実と幻想の境界線を怪しく越えてみせるのだ。


 その異様な怪人(スタッフ&キャストからは”ツクヨミ”とか”ヨミちゃん”と呼ばれていた)は、ことあるごとに彼の前に現れてはタバコの煙をプカプカとくゆらせ、時に深瀬をじっくりと諭し、かと思えば「お前はそんな生き方でいいのか?」と挑発する。しかも英語で。面白いことに、その喋っている内容を深瀬は通訳も介さずに直感で理解できる。ある意味、ヨミちゃんは主人公を破滅へといざなうメフィストのようでもあり、はたまた深瀬はこの漆黒の相棒にどこか自分自身を見出しているようにさえ思える。



『レイブンズ』© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films



変幻自在な浅野、どっしりした芯を持つ瀧内



 さすがというか、やっぱりというか、この深瀬を演じる浅野の存在感がずば抜けている。刹那的でどこまでも破綻した芸術家であり続けながら、しかしどの場面においても目を背けたくなるような息苦しさは決してなく、むしろ主人公のどうしようもなさが滑稽な笑いになって込み上げてくるほどだ。


 昨今のドラマ『SHOGUN 将軍』の役柄がそうだったように、浅野はどこまでも観る者に己の役柄の尻尾を掴ませない。型にはまらず、心も体も常に変化し、しなやかな流体であり続ける。だからこそ「彼は一体何者なのか?」「彼の本音や本心は一体どこにあるのか?」といった我々の興味関心は尽きることなく、今回の深瀬役でもその人生の旅の終着地までどっぷりと寄り添い、見届けたいと願わずにいられない。


 一方、深瀬が漆黒の闇だとすれば、妻・洋子の存在はそこに光を注ぎ、すべてのものを照らしだす太陽や月のようだ。この役を演じる瀧内公美もまた、生命力にあふれた存在感で軸足をしっかりと定め、浅野の飄々たる演技に触れても決して芯を崩すことはない。


 単なる愛という言葉では括れない、正反対の気質で互いを照らしあい、ぶつかり合い、並走する、まさに愛憎あいまった二人の関係性が実に危うく輝きだす。





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