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『サブスタンス』強烈かつ斬新なスタイルながらハリウッドの歴史もなぞる超怪作

(c)2024 UNIVERSAL STUDIOS

『サブスタンス』強烈かつ斬新なスタイルながらハリウッドの歴史もなぞる超怪作

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※本記事は物語の詳細に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


『サブスタンス』あらすじ

元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。


Index


若さへの欲求をセンセーショナルに表現



 人間には多くの欲求がある。そのひとつが「いつまでも若くありたい」という、現実では叶わぬもの。もちろんたゆまぬ努力によって若さを少しでも長く維持することは可能だが、一瞬の劇的効果で若さを保つ、あるいは甦らせるのは現実的には難しい。それゆえに「若さの再生」はフィクションの世界=映画の題材にふさわしいと考えられつつも、このテーマの作品はそれほど多くはない。


 ロバート・ゼメキス監督の『永遠に美しく…』(92)では、不老不死の秘薬を手にした2人の女性の、何が起こっても死なない状況がブラックコメディとして描かれた。不老不死といえば、特権階級のみがその恩恵に与(あずか)る『未来惑星ザルドス』(74)、遺伝子操作によって25歳から肉体が老化しなくなる『TIME/タイム』(11)のようなSFタッチの作品で使用され、ある事故によって肉体が老化しなくなる『アデライン、100年目の恋』(15)や、中国の作家ケン・リュウの短編を基にした日本映画『Arc アーク』(21)といったファンタジー&ヒューマンドラマの軸となった。そしてその多くが、人間にとって「老けない」「死ねない」ことはむしろ悲劇ではないか、やはり自然の法則に従って生きることの方が幸せではないかと伝えていたりする。



『サブスタンス』(c)2024 UNIVERSAL STUDIOS


 『サブスタンス』(24)は、そこから一歩進み、「老いない」ではなく「若返る」設定が、センセーショナルに描かれる。老いた姿で生まれ、成長とともに若返る『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)のような逆行とも違い、秘薬の物質(=サブスタンス)によって、若い「もう一人」の自分・スーが生まれてくる……という状況が、過去のどんな映画とも違うサプライスを届ける。50歳を迎えた元人気女優が若さを復活させるために薬を使う動機、およびその後の肉体の変容は『永遠に美しく…』とも重なるが、ホラーテイストが濃厚で、ジャンルとして括れない独創性が際立つ。唯一無二の作品として、観る者を最後の最後まで虜にする魔力が備わったと言っていい。




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