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『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』90代と20代。キャリア絶好調、2人の相性が最高!

© Courtesy of Universal Pictures

『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』90代と20代。キャリア絶好調、2人の相性が最高!

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信頼と友情が伝わってくる祖母と孫の関係



 この『テルマがゆく!』は、ジャンルとしては犯罪コメディ。しかし最も愛おしく感じられ、共感を誘う芯の部分は、テルマと孫のダニーの関係にあるだろう。93歳になっても一人暮らしを続けるテルマが、近所に住むダニーは何かと心配。車でテルマをあちこち連れて行くし、コンピュータの使い方を教えたりと、理想的な祖母と孫の関係を築いている。だからこそ孫のダニーの危機にテルマがパニックになって詐欺に引っかかってしまうのだが……。一方でダニーも心の問題を抱えており、両親は今後の生活を不安視している。そんな彼が、祖母の奮闘によって自分自身も変えていく展開は、この手の作品としてよくあるパターンだが、想定を超えて感情移入できるのは、キャスティングが功を奏したからだと実感する。2人の俳優が、ともにキャリア絶好調の時期に出会ったのは、偶然とはいえ作品には幸運だった。


 テルマ役のジューン・スキッブは、1950年代に舞台で俳優活動をスタート。映画に初めて出たのはウディ・アレン監督の『アリス』(90)で当時すでに61歳だった。その後、映画の仕事も増えて『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。この時、84歳。そこが頂点になるかと思いきや、2024年には『インサイド・ヘッド2』(24)で声優を務め、コメディ映画『Don’t Tell Mom The Babysitter’s Dead』でメインキャスト、この『テルマがゆく!』の主役、さらに2025年はカンヌ国際映画祭でお披露目されたスカーレット・ヨハンソンの初監督作『Eleanor the Great』(25)でタイトルロールのエレノア、つまり主人公を演じるなど、95歳で引く手数多の状態に!



『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』© Courtesy of Universal Pictures


 そしてダニー役のフレッド・ヘッキンジャーも、2024年だけで『テルマがゆく!』以外に、超大作『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』(24)のカラカラ帝役をはじめ、アカデミー賞作品賞ノミネートの『ニッケル・ボーイズ』(24)、マーベル作品の『クレイヴン・ザ・ハンター』(24)と信じられないほどの活躍ぶり。キャリアのひとつの頂点を迎えた。そんな両者の“勢い”が作品にマジックを起こしたと言ってもいい。


 実際に彼らがリビングで一緒に映画を観ているシーンと、その会話からは、演じる2人の仲の良さがひしひしと伝わってくる。フレッドによると、脚本の読み合わせで初めてジューンと会った際、「あまりに意気投合して話が盛り上がり、まったく脚本も開かないで数時間が過ぎてしまった」とのこと。ジューンも「フレッドとは10年後も親友でいると思う」と、その親密な関係を語っている。祖母と孫の役でいること以上に、心から信頼し合っている絆や安心感が映像に刻印されたことで、観ているこちらも優しい気持ちになってしまうのだ。





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