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公開から40年、今でも鮮明な恐怖と絶望。ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』

公開から40年、今でも鮮明な恐怖と絶望。ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』


避けられつつあるタブーへの鋭い言及



 そして40年間という年月は、ゾンビのキャラクター描写におのずと変化をもたらしている。それは人道的な配慮などから、カニバリズム(人肉食)という属性が薄れつつあることだ。形骸化とまではいかずとも、近年は咬まれることで感染するよう描写が抑えられ、直接的な食人表現は回避の傾向にあるようだ。


ゾンビ』は、この属性を存分に活かし、それを視覚化させた残酷描写も特徴のひとつである。特殊メイクアーティストのトム・サヴィーニが造り出す人体破壊は、どれも凄惨かつ悪趣味で目を背けたくなるものだ。しかし、残酷さを徹底させるための創意工夫が存分に凝らされたそれは、娯楽フィクションに求められる役割を充分に果たしている。




 だが『ゾンビ』が同ジャンルの中でも特別な存在としてあるのは、カニバリズムを視覚的なものだけでなく、テーマとしてしっかり本編に食い込ませ、観客に重要な問いかけとして提示するところだろう。 


 それが見られるのは物語の後半。かろうじて放送がおこなわれているテレビの討論番組で、学者が終末的な状況を打開する手段として「(連中との共存を図るため)人間の肉をゾンビに与えろ」と提案するのだ。


 つまり、それはタブーであるべきはずの、カニバリズムの是認に他ならない。『ゾンビ』はこのシチュエーションをもって、社会混乱によって文明や倫理が崩壊する真の恐ろしさを、そしてモラルや人の尊厳を失った世の中がいかに絶望的なものかを、強く実感させるのである。


 マイナーな存在がメジャーになっていけばいくほど、仕様は洗練され、ネガティブファクトが取り除かれていくのは時代の趨勢だ。ゾンビというキャラクターも、そうやって市民権を得てきたのだ。だが映画『ゾンビ』はモダンゾンビのパイオニアであるロメロの設定に忠実であり、タブー視された問題に正面から向き合うことで、恐怖の本質にとことん迫ろうとする。このホラー映画史上の重要作を、ゾンビに魅了されている者は避けて通ることなど許されないのだ。



文:尾崎一男(おざき・かずお) 

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter: @dolly_ozaki



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