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『ブラッド・ダイヤモンド』大スターの境地と監督の職人芸が一体化

(c)Photofest / Getty Images

『ブラッド・ダイヤモンド』大スターの境地と監督の職人芸が一体化

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『ブラッド・ダイヤモンド』あらすじ

1999年、内戦が続く西アフリカのシエラレオネ。漁師のソロモンは、反政府武装勢力の革命統一戦線(RUF)に捕まり、武器調達の資金源となるダイヤモンド採掘場で強制労働させられる。そんな中、ソロモンは大粒のピンク・ダイヤモンドを発見し、騒動の混乱に紛れて採掘場近くに埋めて隠す。一方、元傭兵のアーチャーは、ダイヤの密輸中に逮捕され、刑務所でソロモンと出会う。やがて紛争ダイヤの密輸の実態を追うジャーナリスト、マディーも加わり、3人は隠されたピンク・ダイヤモンドを求めて、命懸けの道を進む。


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不本意な作品で与えられるオスカー



 多くの映画人にとって最高の栄誉となるのが、アカデミー賞=オスカーの受賞。対象となる作品での仕事がハイレベルで評価されての受賞は当然なのだが、そうではないパターンも時として見受けられてきた。何度もノミネート止まりで受賞を逃してきた人に「そろそろオスカーを」と、いわゆる“功労賞”的に与えられるケースを、かつて目にした人も多いはず(近年はやや少なくなった)。


 有名なのは『ハスラー2』(86)でのポール・ニューマン。『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(92)のアル・パチーノ。『ディパーテッド』(06)のマーティン・スコセッシあたりだろう。受賞の対象となった作品も悪くはないのだが、「この人なら、もっと別の作品で受賞すべきだった」という声が上がったのも事実。


 ハリウッドを代表するスターになったレオナルド・ディカプリオも、長らく「オスカーをもらうべき」と言われ続けてきた。19歳の時、『ギルバート・グレイプ』(93)でアカデミー賞に初めてノミネート(助演男優賞)されてから、主演男優賞ノミネートの常連となる。しかもノミネート“されるべき”だった作品も数多い。アカデミー賞の歴史で最多11部門受賞の記録を誇る『タイタニック』(97)では、ディカプリオがノミネートすらされなかったことが、逆に大きな話題になった(最多11部門受賞は、『 ベン・ハー』/59、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』/03とのタイ記録)。そのようにアカデミー賞から“不遇”扱いされてきた彼は、ようやく『レヴェナント:蘇えりし者』(15)でその栄誉を受けることになる。ただし前述の3人と違ったのは、『レヴェナント』のディカプリオの演技も、彼の俳優人生の集大成でもあったことだ。



『ブラッド・ダイヤモンド』(c)Photofest / Getty Images


 しかし改めて、彼に最初のオスカーをもたらすべきだったのは、『ブラッド・ダイヤモンド』(06)だと思う。『レヴェナント』の前にディカプリオがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのは『アビエイター』(04)、『ブラッド・ダイヤモンド』、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)の3作品。このうち『 アビエイター』は、実業家で映画プロデューサー、飛行家のハワード・ヒューズで、強迫神経症の面など、いかにも演技力が発揮しやすい役。『ウルフ・オブ〜』は、口が達者な株式ブローカーでドラッグにも溺れるなど過激なシーンも多く、やはり熱演がハマるキャラ。この2作とも実在の人物であり、その点でもアカデミー賞で評価されやすい。一方で『ブラッド・ダイヤモンド』は、わかりやすいケレン味の演技に頼るというより、複雑な心理、深い部分の葛藤や、本人にとっても思いがけない感情などを表現することが要求された。俳優として、より高度な技術が試され、そこにディカプリオがこれまで培ったテクニックを凝縮させた印象だ。





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