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『ギャング・オブ・ニューヨーク』草創期のNYを鮮烈に描いた、スコセッシとディカプリオ初タッグ作

(c)Photofest / Getty Images

『ギャング・オブ・ニューヨーク』草創期のNYを鮮烈に描いた、スコセッシとディカプリオ初タッグ作

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『ギャング・オブ・ニューヨーク』あらすじ

1846年のニューヨーク。米国生まれの白人たちとアイルランド系移民たちとの間で縄張り争いが激化し、2つの組織は全面対決へ。目の前で父親を殺された少年のアムステルダムは、15年の時を経て、父を殺したギャング組織のボス、ビルへの復讐を誓い、この地に帰ってきた。街を支配するビルの組織に素性を隠して入り込むが、そこで美しくも謎めいた女ジェニーに出会い、許されない恋に落ちる……。


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歴史の読み直しにこだわるスコセッシ



 2023年は久しぶりに“マーティン・スコセッシ・イヤー”となった。『アイリッシュマン』(19)以来、4年ぶりの監督作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』がアメリカの賞レースの最前線にいて、その質の高さが話題を呼んだからだ。3時間半の長尺物だが、その衰えないパワーに驚かされた。主演のレオナルド・ディカプリオ、助演のロバート・デ・ニーロという、スコセッシ映画でおなじみのふたりの大スターの共演も話題になったが、大抜擢の主演女優、リリー・グラッドストーンの堂々とした好演ぶりも忘れがたい。それまで知名度が低かった女優から、最高の演技を引き出した点にもスコセッシの枯れないエネルギーを感じた。


 そう、80代になった今も、スコセッシは前進を続けている。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は1920年代のアメリカ先住民の知られざる歴史に光をあて、アメリカ史を読み直した点が斬新だった。


 そんな“歴史家”としての彼のキャリアをふり返った時、特に重要な1本に思えるのが、2002年に公開された『ギャング・オブ・ニューヨーク』である。19世紀後半のニューヨークが舞台で、ニューヨークが都市として形を成す前の無秩序な世界を鮮烈な映像で描き出し、そこに現代につながるものを見出す。スコセッシは70年代の出世作『ミーン・ストリート』(73)や『タクシー・ドライバー』(76)でニューヨークのザラザラした風景をとらえていたが、『ギャング・オブ・ニューヨーク』にはプリミティブなパワーあふれるニューヨークの原風景が出現する。



『ギャング・オブ・ニューヨーク』予告


 当時、スコセッシ自身はこんなコメントを残している。「年齢と共にこの国やニューヨークの歴史にひかれていく。アメリカの歴史はまだ浅く、ヨーロッパやアジアには遠く及ばない。でも、ニューヨークの歴史のひとつひとつに興奮させられる」(『ギャング・オブ・ニューヨーク』DVDオーディオコメンタリーより)。


 この作品では自身のルーツであるニューヨークの風景を読み直し、イタリアのチネチッタに作られた街の中に未開地のイメージを重ねることで、“スコセッシ流ウエスタン”にもなっていた。そして、2023年には20世紀初頭のオクラホマ州の原野を舞台にした『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を作ることで、別の形の“ウエスタン”を完成させることになった。


 『ギャング・オブ・ニューヨーク』は21世紀に入って、最初のスコセッシ作品であり、その後、名コンビとなるレオナルド・ディカプリオとの初コンビ作でもあった。




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