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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』マーティン・スコセッシ監督 自分の中で変わってきた映画作りとは【Director’s Interview Vol.364】

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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』マーティン・スコセッシ監督 自分の中で変わってきた映画作りとは【Director’s Interview Vol.364】

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巨匠マーティン・スコセッシ監督の待望の最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』がついに公開。主演は監督とは6度目のタッグとなるレオナルド・ディカプリオ。そしてディカプリオとは27年ぶり、スコセッシ監督作品では初共演となるロバート・デ・ニーロが脇を固め、夢のトリプルタッグが初めて実現。しかも脚本は『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)でアカデミー脚色賞を受賞したエリック・ロスと、最強の布陣が揃っている。そして本作の上映時間はなんと3時間26分!超重量級の作品が生まれてしまった。


衰えを知らず今なお進化し続ける、御年80歳のマーティン・スコセッシ監督に話を伺った。



『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』あらすじ

地元の有力者である叔父のウィリアム・ヘイル(ロバート・デニーロ)を頼ってオクラホマへと移り住んだアーネスト・バークハート(レオナルド・デカプリオ)。アーネストはそこで暮らす先住民族・オセージ族の女性、モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち夫婦となるが、2人の周囲で不可解な連続殺人事件が起き始める。町が混乱と暴力に包まれる中、ワシントンD.C.から派遣された捜査官が調査に乗り出すが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていたーー。


Index


原作からの改変理由



Q:デビッド・グランのノンフィクションのどういう部分に魅力を感じたのでしょうか。


スコセッシ:私は昔から西部劇に憧れがあった。いわゆる伝統的なアメリカン・ウェスタンだよ。しかし、これまで数々の名監督たちが手掛けて来た途方もないジャンルに、果たしてどう挑戦すればいいのかずっとわからないままだったし、ウェスタンにふさわしい物語に出会うとも思えなかった。そもそも、その偉大なジャンルを手掛けるのに恐怖を覚えるくらいでね。が、丁度、『アイリッシュマン』(19)の制作に入ろうとしたころに出会ったグランのノンフィクションの背景は、まさにその私の長年の憧れを思い起こさせるものだった。惹かれた一番の要素はまさにそこだよ。


Q:ストーリーはどうでしょう? 私たちがあまり知ることのなかった事件を扱っていますが、グランの原作とは異なる展開になっていますね。


スコセッシ:1920年代のオクラホマ州でオセージ族に対して制定されていた規則に、私は興味を覚えた。石油採掘権を手に入れることで裕福になったオセージ族のその受益権は女性たちに行くように決められていたんだ。結果、彼女たちと結婚しようと白人男性たちが群がって来た。そういうなかで起きるのがオセージ族を巡る連続殺人事件で、原作のほうはその謎を解くため送り込まれたFBIの捜査官、トム・ホワイトが主人公になっている。今回の共同脚本のエリック・ロスと、当初は原作通りそのホワイトを主人公に事件の“外側”から描こうとしていた。つまり“犯人捜し”というミステリだ。



『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』画像提供 Apple


が、それでいいんだろうかという気持ちが常にあったのも事実なんだ。というのも「この事件でシロ(無罪)だった人はいたんだろうか」と思ってしまったからだ。そうなると、オクラホマの町の白人たちの考え方の問題であり、人間の性(さが)なのかもしれない。あるいは、アメリカを開拓した入植者の文化の問題ということでもあるのかもしれない。犯人捜しが成立するのだろうかってね。そうやっていろいろと逡巡した結果、大きく構成を変えることにしたんだ。


Q:当初はレオナルド・ディカプリオがトム・ホワイトを演じることになっていたのが、オセージ族の女性モリーと結婚するアーネストに変更になりましたね。


スコセッシ:パンデミックが起きたとき、レオとキャラクター描写について話し合った。そのとき彼に「物語の感情の核心はどこにあるんだ?」と尋ねられたよ。私は「核心はアーネストとモリーの関係にある」と答えたんだ。そこで私たちはオセージ族のもとを訪れ独自の調査をした。結果、アーネストとモリーは本当に愛し合っていたという事実を突き止めることが出来た。私はこう考えた。「彼らふたりの関係性を描けたら、外側からの視点ではなく、内側から描くことが出来るだろう」とね。そういう経緯を経てレオがアーネストを演じることになったんだ。


この作品の面白いところは、アーネストが頑なに真実から目を背けようとしているところにある。あれこれと理屈を並べて真実を見ようとしない。では、事実を果たして彼はどう捉えていたのか? それはレオの目を見ればいい。すべてを語っているから。ただ、私はこれをアーネストに限ったことだとは思っていない。人間だれしも、そうやって自分を騙す能力をもっている。みんな、弱いんだよ(笑)。





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