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『ペギー・スーの結婚』フランシス・フォード・コッポラがキャスリーン・ターナーと共に描く、過ぎ去った時間と人生の選択

(c)Photofest / Getty Images

『ペギー・スーの結婚』フランシス・フォード・コッポラがキャスリーン・ターナーと共に描く、過ぎ去った時間と人生の選択

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バディ・ホリーのテーマ曲



 テーマ曲の「ペギー・スーの結婚」はバディ・ホリーが1959年7月に発表したナンバー。50年代後半にバディは才能あふれるロックンローラーとして認められ、「ザットル・ビー・ザ・デイ」や「ペギー・スー」などのヒット曲を放ったが、59年2月にツアー先の飛行機事故で他界。その飛行機には映画『ラ・バンバ』(87)で描かれるリッチー・ヴァレンスも乗っていた。その不吉なツアーの様子は『ラ・バンバ』にも登場する。


 バティ自身を描いた伝記映画には『バディ・ホリー・ストーリー』(78,日本ではビデオのみ)があり、主役のゲイリー・ビジーは自身で歌もこなし、アカデミー主演男優賞の候補になっている。ビジーのステージ場面がリアルな印象を残す佳作だった。


 ファオーサ製の黒ぶちメガネが印象的なロックンローラーで、今でも伝説の存在として知られ、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズのメンバーにも影響を与えたといわれる。彼やヴァレンスが事故で亡くなった日は、音楽が死んだ日、とアメリカでは言われている。



『ペギー・スーの結婚』(c)Photofest / Getty Images


 そんなバディの曲「ペギー・スーの結婚」は、彼の死後に発売された曲だった。57年のヒット作「ペギー・スー」のヒロインの後日談を描いた曲。最初に出たのは、バディのデモテープにオーバーダビングしたバージョンだが、映画ではオリジナルともいえるバディの歌とギターだけのシンプルな曲。よりパーソナルなサウンドとなっている。


 そんな曲の使われ方はヒロインの心の軌跡を描いたこの映画にふさわしい。「ペギー・スー」で描かれた若い女の子は、続編の「ペギー・スーの結婚」では結婚して別の人生に踏み出す。その変化は映画でターナーが演じる変化でもある。10代と40代、ふたつの自分を生きながら、ペギーは時間という押しとどめることのできない流れを体感する。あの時、別の選択をしていれば……。そんな思いは誰もが抱くはずだが、改めて振り返ると、やっぱり自分は自分だし、その道を選んだことで今の自分があることも分かる(納得できる)。『ペギー・スーの結婚』は楽しい娯楽作品だが、見終わると過ぎ去った自分の時間と人生の選択について、ふと思いをめぐらせたくなる。



文:大森さわこ

映画評論家、ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウェブ連載を大幅に加筆し、新原稿も多く加えた取材本「ミニシアター再訪 都市と映画の物語 1981-2023」(アルテスパブリッシング)を24年5月に刊行。東京の老舗ミニシアターの40年間の歴史を追った600ページの大作。



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