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『MELT メルト』ベルギーの俳優出身監督が濃密に描く、凍りつくほどのトラウマとその復讐劇

©Savage Film - PRPL - Versus Production-2023

『MELT メルト』ベルギーの俳優出身監督が濃密に描く、凍りつくほどのトラウマとその復讐劇

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子供時代の出来事に端を発するリベンジ・スリラー



 私の個人的な印象でいうと、ヨーロッパ映画には子供を可愛らしさの象徴として扱うことなく、その幼さゆえの無鉄砲さ、率直さ、はたまた大人顔負けの賢さや感受性の強さを、鋭く突き抜けるような筆致で描いた名作が多いように感じる。近年のベルギー映画で言うと、少年たちが織りなす物語『CLOSE/クロース』(22)も美しく、繊細でありながら、胸を引き裂く痛みを伴う一作だった。


 『MELT メルト』(23)は子供時代のトラウマを描いた作品でありながら、一方で”リベンジ・スリラー”とも言われる先行きの読めない展開を持つ。翻案にあたってはこれが初長編監督となるフィーラ・バーテンスがおよそ6年を費やして執念と力量を発揮した。彼女はもともと20年以上も女優として活躍してきた人。その揺るぎないキャリアは、”人間を描く”ことが不可欠な本作に十二分に生かされている。



『MELT メルト』©Savage Film - PRPL - Versus Production-2023


 制作側には、何かしら救いとなる(ハッピーエンド的な)描写を差し込ませようと主張する人もいたという。しかしバーテンスはエッセンスが薄まることを認めなかった。主人公が長らく沈黙を強いられたこれらの事象を、心理的な側面からしっかり描き尽くそうとしたのである。中でも我々が胸を締めつけられるのは、13歳のエヴァが周囲の状況を誰よりも敏感に察知する少女として描かれている点だ。その賢さや明晰さゆえに彼女の見えているものは一味違う。と同時に、悩みや苦しみを抱え込むことも多い。


 彼女は安心できる居場所を欲している。だからこそ人に認められよう、受け入れられようと必死にもがく。口喧嘩の絶えない父母の間を取り持って、家族の仲をつなぎ止めようと気を遣うこともある。少し年上の幼なじみの男の子たちの遊び仲間であり続けたいと心を尽くす。その健気さゆえに、一つ一つの感情の積み重ねがまさかの思いがけない出来事へ転じゆく様には本当に言葉を失う。





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