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『入国審査』旅行者にとって他人事ではない悪夢を夏休み前にシェア

© 2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY

『入国審査』旅行者にとって他人事ではない悪夢を夏休み前にシェア

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2人の監督が仕掛けた絶妙なカメラワーク



 誰だって入国審査は無事に通過したい。犯罪者でもないのに、何か悪いことをしているかのような錯覚に陥らせるあの時間は、何度経験しても嫌なものだ。2人の監督は人物の顔をアップで捉えることで、微妙に変化する表情が何を意味しているかを推理させようとする。一方では、取り調べのシーンで2台のカメラ、つまり、捜査官を映すための1台とディエゴとエレナを映すための1台のみを使い、観客を狭い取調室内に監禁することに成功している。その圧迫感たるや、閉所恐怖症の方には決してお勧めできないレベルだ。



『入国審査』© 2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY



第2次トランプ政権下で実際に起きていること



 本作が描く入国審査の風景が以前にも増してリアルなのは、第2次トランプ政権下のアメリカでは移民排斥のムードがいっそう高まっているからだ。実際、移民の在留資格取消しや強制送還を急速に進めているトランプ政権下のアメリカでは、一般の旅行者に対する入国審査も強化されているというニュースを目にする。


 例えば今年の3月、ホノルル空港でホテルを予約していなかったドイツ人観光客が空港で身柄を拘束され、ドイツに強制送還されてしまった。彼らはESTAを取得していたにもかかわらず、米国境警備当局によって拘束され、その後、東京とカタールを経由してドイツに帰国したことが伝えられている。ESTA導入以前には必要だった米国入国カードには、滞在先のホテル名を記入する欄があったと記憶するが、まさかホテルの未予約が強制送還の理由になる時代がやって来るとは!?


 その旅行者は「こんなことがまさかドイツ人にも起きると思わなかった」とショックを隠せなかったというが、日本人も安心してはいられない。まさか、泊まるホテルも決めずにアメリカに入国する日本人はいない、少ない、かもしれないが、本作『入国審査』を最後まで観ると、審査は大した理由もなく、問答無用で旅人の夢と希望を打ち砕くこともあり得ることがよく分かる。たまたま今年6月にバカンスでニューヨークを旅行した者として、あの入国審査での緊張感が消え去らないうちに、お節介とは知りつつ、このレビューを書くことにした次第である。


引用記事

https://inods.co.jp/topics/5724/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB220DL0S5A420C2000000/



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。現在、映画com、MOVIE WALKER PRESS、Safariオンラインにレビューやコラムを執筆。また、Yahoo!ニュース個人にブログをアップ。劇場用パンフレットにもレビューを執筆。著書に『オードリーに学ぶおしゃれ練習帳』(近代映画社刊)、監修として『オードリー・ヘプバーンという生き方』『オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120』(共に宝島社刊)。



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作品情報を見る



『入国審査』

新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中

配給:松竹

© 2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY

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