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『ヒックとドラゴン』リアルな手触りと迫真の臨場感を伴い再び舞い降りた、実写版アドベンチャー

©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

『ヒックとドラゴン』リアルな手触りと迫真の臨場感を伴い再び舞い降りた、実写版アドベンチャー

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ディーキンスが推薦した「打ってつけの撮影監督」



 今回の実写版『ヒックとドラゴン』(25)は、かつてのコンビ監督の1人であるディーン・デュボアが単独で監督を務め、実質的に彼の実写劇映画デビュー作となった。とは言え、彼が自ら率先して実写化を望んだわけではない。先にユニバーサル内で企画が持ち上がり、「ならば、誰よりもシリーズをよく知るデュボアに任せよう」と打診がいったとか。


 「やる!」と決めたデュボアは、まずアニメ版で壮麗なテーマ曲を響かせた作曲家のジョン・パウエルに連絡して協力を求めた。続いて2番目に連絡したのがロジャー・ディーキンスだ。デュボアにしてみれば、上記の経緯から言って、本作の撮影監督としてディーキンス以外の選択肢は考えられなかったはずだ。要は多忙な彼がこのオファーを呑んでくれるかどうか。


 しかし返事はノーだった。その頃、ディーキンスは『ブレードランナー 2049』を撮り終えたばかりで、特殊効果をふんだんに用いた作品からはしばらく距離をおきたいと考えていたようだ。もしかするとすでに高齢の域に達していることもあり、仕事量をセーブしたいとも考えていたのかもしれない。



『ヒックとドラゴン』©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.


 ただし、面倒見の良いディーキンスは辞退する代わりに「この映画に打ってつけの男を知っている」と口にした。そこで紹介されたのがビル・ポープ。言わずと知れた『マトリックス』シリーズからサム・ライミ作品、さらにはマーベル作品までを幅広く手がけるベテランである。CGIが組み込まれた超大作の経験も豊富だし、多様なカメラの使いわけも心得ている。それに私の中では、薄暗いダークな場面の効果的な撮り方を知り尽くした人という印象もある。


 デュボアとポープは密に連携しながら、実写ならではの映像の可能性をひたすら探求していった。その上、デュボアの大きな助けとなったのは、ポープが映像のみならず、ストーリー(脚本)やキャラクターの描き方、それに俳優たちの演技の良し悪しをしっかり判断できる目を持っていたことだ。実写劇映画にまつわるあらゆることが初挑戦だったデュボアにとって、ポープの存在がどれほど心強いものだったか想像するにあまりある。おそらく、ディーキンスはそういった事情も考慮した上で、親交のある同業者の中から自信を持ってポープを推薦したのだろう。映像の裏側で交わされたこのバトンリレーにちょっぴり胸が熱くなるのは私だけだろうか。




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