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『ヒックとドラゴン』リアルな手触りと迫真の臨場感を伴い再び舞い降りた、実写版アドベンチャー

©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

『ヒックとドラゴン』リアルな手触りと迫真の臨場感を伴い再び舞い降りた、実写版アドベンチャー

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アニメ版を踏襲したストーリーと映像演出



 ところで、アニメ版に触れたことのある方が今回の実写版を観ると、一つの決定的な事実に気づくはず。それはストーリーが同じであるだけでなく、画面構成もほぼ変わっていないということだ。アニメ版を愛するファンは余計な翻案が施されていないことにホッとするだろうし、逆に新鮮味を求める人の中には同じ内容の繰り返しを退屈に感じる人もいるかもしれない。


 だが、何しろアニメ版の誕生から15年。メインとなる世代がほぼ入れ替わっていることを考えると、今回の実写版をまた新たな入り口としてフレッシュに受け止める人は数多くいるはずである。重要なのは、両作が決して他方を否定したり、修正したり、補完する間柄ではないと言うことだ。むしろ二つの選択肢であり、二つの味わいであり、二つの可能性と言うべきもの。それぞれ好み、状況、年齢に沿った道筋から山を登り始めて、最終的に両作が共有する「普遍的なテーマ性」の山頂へと辿り着くのであれば、これほど幸福なことはない。


実写化に伴って膨らみを増したディテール



 ただ、そんな中でもデュボア監督が言うには、2010年の制作時にはアニメならでは上映時間の制約のようなものがあったとか。アニメ版は98分。実写版は126分。ならば後者に約30分の膨らみをもたらしたものは何かと言うと、やはりそれは映像の狭間に敷き詰められた情報量に尽きるだろう。


 そもそもアニメーション特有のやや誇張された手法で表現されたものを「圧倒的な実在感」へと置き換えるにあたっては、物理的な再創造が必要だ。生身の俳優が演じるだけで質感は別物に変わるし、共演シーンでは化学反応の度合いも増す。キャラの肉付けの面で、アスティ(ニコ・パーカー)があれほど真剣に厳しい訓練に打ち込もうとする”理由づけ”のディテールが掘り下げられているのも忘れがたい。



『ヒックとドラゴン』©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.


 さらに「観客が『ジュラシック・パーク』の恐竜の存在を違和感なく受け入れたように、ドラゴンが本当にいると信じてもらえるようにすることを目指した」(プレス資料より)とデュボアが語るように、CGIを駆使してリアルに描かれるドラゴンの姿は本作の魂と言うべきもの。身の毛がよだつほど獰猛なドラゴンを具現化するのも大仕事だが、むしろそれに輪をかけて驚かされるのは、あの人懐こくて可愛らしいトゥースが、アニメ版の味わいを一切損なわない立体的イメージで巧みに実写化されていることだ。


 そして『ブラック・フォン』(21)でイーサン・ホークを凌駕する演技を見せた新星メイソン・テムズがここでも飾らない存在感で、見事に掘り下げられたヒック像を提示している。ドラゴンと人間。外見は違っていても驚くほど”似た者どうし”の二人が互いの可能性を解き放つく過程は相変わらずの感動を呼ぶ。


 その飛翔シーンを大画面で浴びる時、観客の心までもが彼らと一体化し、抑えがたい高揚が身を貫くのを感じるはず。リアルな手触りと息遣いを帯びた秀作が装いも新たに再降臨を果たすのをぜひ存分に味わってみてほしい。


参考記事URL:

https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-features/how-to-train-your-dragon-live-action-animated-1236263822/

https://www.thewrap.com/how-to-train-your-dragon-dean-deblois-interview-edit-bay/



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。




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『ヒックとドラゴン』

大ヒット上映中

配給:東宝東和

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