※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。
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80年代、リュック・ベッソンの出世作
かつて日本で巻き起こった、「ミニシアターブーム」。その象徴的な一作といえば、フランス映画『グラン・ブルー』が筆頭に上がるのではないか。日本では『グレート・ブルー(『THE BIG BLUE』国際版)』が1988年に先んじて公開され、168分の『Le Grand Bleu/VERSION LONGUE』長尺版が、1992年に『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』のタイトルで公開。その再上陸の際には、フランスでのブームを受けて大盛況、ロングランを果たすことになったのだ。
そんな『グラン・ブルー』は、多くのファンの需要に応えたことにより、『ブレードランナー』(82)同様、複数のバージョンが生まれ、後年ややこしい状況になってしまった作品でもある。2025年に日本で上映される4K版『グラン・ブルー 完全版 4K』は、長尺の168分のバージョンとなる。
『グラン・ブルー 完全版 4K』©1988 GAUMONT
この人気作を、リュック・ベッソン監督がまだ29歳のときに手がけたというのだから、驚かされる。本国フランスで「グラン・ブルー・ジェネラシオン(グラン・ブルー世代)」と呼ばれる若者のファン層が生まれるほどの大ヒットを果たし、1980年代のフランス映画界で、ジャン=ジャック・ベネックス、レオス・カラックスとともに「恐るべき子どもたち」と称されたリュック・ベッソンを、フランス映画の枠を超える国際的な映画監督へと押し上げることにもなった。
そのストーリーは、実在の著名なフリーダイバー、ジャック・マイヨールとエンゾ・マイオルカの活動を参考に、創造の翼を大きく広げたフィクションだ。かつてギリシャの海辺の町で少年時代を過ごしたジャック・マイヨール(ジャン=マルク・バール)とエンゾ・モリナーリ(ジャン・レノ)は、大人へと成長して才能あるダイバーになる。フリーダイビングの大会で快進撃を続けるエンゾは、ジャックを競技に誘い、以後ライバルとして記録を伸ばし合う関係となっていくのだ。
保険調査員の仕事でジャックと出会った、ニューヨークに住むジョアンナ(ロザンナ・アークエット)は、ジャックの人間ばなれしたミステリアスな魅力に惹かれ、不正出張をしてまで彼らの競技に同行。やがてジャックと一緒に暮らすようになるが、そんな幸せな状況はある出来事によって一変するのだった……。