『アニキ・ボボ』あらすじ
ドウロ河近郊に暮らす少年たち。カルリートスは内気な夢想家で、エドゥアルドは恐れを知らぬリーダー。二人はともに、グループで唯一の少女テレジーニャに恋をしている。ある日、カルリートスはテレジーニャが欲しがっていた人形を盗み、彼女にプレゼント。そのことをきっかけに少年たちの間に緊張が高まり、カルリートスはグループから仲間はずれにされる……。
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ポルトガルの巨匠オリヴェイラの初長編作品
ポルトガルの巨匠にして、多くのシネフィルの間で神聖視されている映画史上の重要な監督、マノエル・ド・オリヴェイラ。そのスタイルは変幻自在で、社会や歴史、哲学や宗教を大胆に横断。観客に世界や人生の意味を考えさせながら、意外な展開やアヴァンギャルドな演出で、鮮烈な印象を残している。その生涯は106歳で幕を下ろしたが、100歳以上の現役監督として映画を撮り続けたことは、まさに超人的であった。
オリヴェイラ監督の初長編作品といえば、1942年の『アニキ・ボボ』である。第二次世界大戦の時代、ポルトガルはヨーロッパ最長の独裁政権下にあった。オリヴェイラの故郷であり、歴史ある街ポルトのドウロ河周辺を舞台に、本作『アニキ・ボボ』は、そういった暗い時代を背景にして撮影がおこなわれたのだ。

『アニキ・ボボ 4Kレストア版』© Produções António Lopes Ribeiro
多くの映画監督の最初の作品を観れば、その生涯にわたる作風を感じることができるといわれる。長編劇映画としてのスタートとなった本作はまさに、オリヴェイラ監督の今後を予見する、さまざまなきらめきが散りばめられている。
タイトルの「アニキ・ボボ」とは、ポルトガルの一部の子どもたちの間で、掛け声として使われる言葉だという。そこから分かる通り、本作はポルトの街で遊ぶ子どもたちを中心に、道徳をテーマにした物語が展開する。とはいえ、やはりオリヴェイラ監督作だけあって、その内容は子ども向け映画を逸脱した部分が少なくない。