2025.12.05
近年、さまざまな旧作が4Kやリマスターで再公開されているが、まさか『ジャグラー/ニューヨーク25時』(80)を改めて観られるとは思ってもいなかった。1980年製作のアメリカ映画。日本でも同年公開され、そこそこのヒットとなったことは記憶しているが、その後VHSリリースされたのみでDVD化はされておらず、当然のように再評価の機会もナシ。しかし、これは文句なしにサスペンスアクションの傑作だ。
主人公はトラック運転手の仕事をしている元ニューヨーク市警の刑事ボイド。愛娘キャシーの15歳の誕生日、ディナーの約束をして彼女を学校へ送ったその矢先、キャシーが何者かに誘拐されかけていた。慌てて誘拐犯を追うも、犯人は道路から地下鉄に逃げ込み、さらには車を奪って逃げきった。ボイドは必死の追跡もむなしく、器物破損や暴行の罪でNY市警に連行される。
犯人のソルティックは、サウス・ブロンクスの貧困地区に住む男。プエルトリコからの不良移民をここに移住させ、治安を悪化させて土地を安く買いたたく権力者に怒りを燃やしていた彼は、悪徳不動産業者クレイトンの娘を誘拐して身代金をせしめようと企てていた。ところが、実際に誘拐したのは、似た背格好で似た服装のキャシー。彼女がどんなに“私の家にはお金なんかない”と訴えても、復讐に憑かれたソルティックの心には届かない。

『ジャグラー/ニューヨーク25時 4K修復版』©1980 GCC Films, Inc
Index
大通りで銃を乱射! クセ者たちが入りまじって加速するスリル
冒頭からここまで30分弱、目まぐるしいスピードで話は進む。物語の主軸は、娘を助けようとするボイドと、強引に計画を推し進めるソルティックの攻防だ。両者共とにかく必死だからスリルは高まるばかりだし、彼らに絡んでくるキャラクターの配置も絶妙で、この後もどんどん話が面白くなっていく。
旧知のトネリ警部補によって署に連行されたボイドには、市警時代、同僚を汚職で告発した過去があった。取り調べに当たるのは、こともあろうにその因縁の同僚バーンズ。逆恨みしたバーンズにボイドはボコられそうになるが、なんとか警察署から逃げ出すことに成功する。しかし怒りの収まらないバーンズはその後もボイドを追跡し続け、42丁目でバーンズを見つけるや、通行人がいるのも気にせずショットガンをぶっ放す。何をしでかすかわからない、クレイジーなキャラだ。
一方、誘拐を成功させたと信じて疑わないソルティックはクレイトンに電話をして身代金を要求。電話の向こうの相手が“娘を誘拐した”と言ってはいるが、目の前に娘がいるクレイトン夫人には意味不明だ。とはいえ、よくないことが起こってることに違いないと、夫人は警察に通報。この誘拐犯との交渉はトネリ警視に任せられることになる。ベテランのトネリ警部補もまた、クセ者風情で味のあるキャラクターだ。