2025.12.22
本作は『天国の日々』にも通じるものがある
20世紀初頭、幼くして孤児となったロバートが、アイダホ州の製材業の中心地ボナーズ・フェリーに鉄道に乗って流れ着く。そこで人生の目的もなく過ごしていたロバートだったが、美しく勝気なグラディスと運命的な出会いを果たし、結婚。川沿いに丸太小屋を建て、娘ケイトを加えて一家3人で健やかな日々を過ごし始める。だが、鉄道建設のために出かけた先での経験は、長く過酷なものだった。白人労働者がわけもなく中国人労働者に暴力を加え、多くの仕事仲間が伐採した木の下敷きになって命を落として行く。彼らの墓には木に打ち付けられたブーツを飾るのが名もなき労働者たちの習わしだ。やがて第一次大戦が勃発、国の経済が苦境に立たされると、ロバートはグラディスと共に農地を耕し、製材所を建てることで新たな生活を開拓する準備を進めるがーー。

Netflix映画『トレイン・ドリームズ』
未開の自然の中で時代の移ろいを見つめ、孤独だった人生に意味を見出そうとした主人公の旅路が、抑制された演出と演技によって具現化されていく。ベントリーはノマドウォーカー(放浪労働者)たちの生活にフォーカスすることで、アメリカという国を築き上げた人々を静かに称えている。そのタッチと時代背景はテレンス・マリックの『天国の日々』(78)を彷彿とさせるものだ。
一方で、映画の終幕近く、ロバートがかつて出会った人々との別れや、それによって苦悩した日々を回顧しながら人生の意味に気づく瞬間は、物語に描きこまれた現代にも通じるあらゆるメタファー以上に、我々に生きることの感動を呼び起こす。広い視野で俯瞰すると、人との出会いと別れ、喜びと悲しみも、取るに足らないものだと納得できるのだ。