神経をガリガリと削るゴア美学
この悪夢をヒリヒリと焼き付け、観客の神経をガリガリと削ってくるのが、監督の倒錯したゴア美学だ。近年のボディ・ホラー、たとえば『サブスタンス』(24)などが追求する、粘液まみれのウェットな不快感とは真逆のアプローチ。本作が執着するのは、皮膚が引きつり、乾いて裂けるような、ドライな手触りだ。
耳に届くのは、骨がきしみ、筋繊維が弾け、乾燥した皮膚が擦れ合うザラついたノイズ。この演出が底意地悪いのは、その乾きが、二人の間に横たわる冷え切った関係そのものだからだ。愛も潤いも枯渇したカップルは、触れ合えば触れ合うほど互いを傷つけ、摩耗していく。その痛覚に訴える演出は、観客の骨髄まで染み渡っていくかのようだ。
シャンクスの作家性を語る上で外せないのが、YouTube世代の申し子であり、生粋のDIY映像作家であること。彼にとってVFXは、完成した映像にまぶすトッピングではない。脚本やカメラワークと同様、物語を語るために不可欠なピースなのだ。
「僕は脚本や監督を独学で学びながら、同時に視覚効果も習得した。インターネットで学んだんだ。YouTubeでチュートリアルを見て、海賊版のAdobeソフトを使って、友人と小さな映画を作っていたよ。僕は常に視覚効果を、脚本家のツールキットの一部として考えてきたんだ」(*2)
実際、本作でも派手なエフェクトこそプロのスタジオの手を借りたものの、シャンクス自身が夜な夜な自宅PCでAfter Effects(モーショングラフィックスの制作ソフトウェア)を回し、執念で膨大なショットをレンダリングし続けたという。オタク監督としての本懐、ここに極まれり!である。

『トゥギャザー』© 2025 Project Foxtrot, LLC
その脳内にあるインスピレーションの源泉も、最高にカオスでバリエーション豊か。まず、物語の転換点となる地下洞窟には、『エイリアン2』(86)とH・R・ギーガーの遺伝子が濃厚に注入された。岩壁に埋め込まれた不気味な信者席や、まるで生物のように呼吸する謎めいた井戸。無機物と有機物が融合したこのバイオメカニカルな空間デザインこそが、二人の肉体に起こるグロテスクな変容の呼び水となる。
その一方で、演出や恐怖の質感においては、『リング』(98)や『呪詛』(22)など、アジアン・ホラー映画からの影響も色濃い。 特筆すべきは、黒沢清監督の『CURE』(97)だ。シャンクス監督は同作の「奇妙で幻想的な編集のリズム」を念頭に置き、本作の不穏な空気感を構築したという。
意外なのが、シャンクスのボディ・ホラー原体験が『スタートレック ファーストコンタクト』(96)にあるという点だ。 彼はジョナサン・フレイクス監督によるこのSF映画を、大人になってから「実はボディ・ホラーだった」と再発見したという。ピカード艦長の眼球に迫る注射針、そしてアンドロイドのデータ少佐への皮膚移植シーン。シャンクスはこの機械による侵食描写にエロティックなニュアンスを感じ取り、その倒錯した感覚を“カップルの融合”というモチーフへと昇華させたのである。