© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023
『ANIMAL』大ヒット&賛否の嵐が吹き荒れる、父子愛ゆえの血まみれ復讐劇
ランビール・カプール、ここにあり
本作の最たる見どころはやはり「SUPERSTAR」(本作のクレジットでもそう黄金色で表記される)、ランビール・カプールが見せる目をギラギラさせたダークヒーローぶりだろう。
ボリウッドにカプール家あり。俳優から監督まで名だたる映画人を数多く輩出するこの名家に育ち『バルフィ! 人生に唄えば』(12)などの大ヒット作で知られる貴公子ランビールは、これまではどちらかというと甘いマスクや清々しいイメージ、深い共感を呼ぶ演技で存在感を発揮してきた。そんな彼が『ANIMAL』では激変。本能を剥き出しに、相手の尊厳を踏みにじるかのように高らかに笑い、己の価値観を是が非でも押しつける役柄で、血みどろの戦いを繰り広げる。
この強烈なギャップは一見に値するし、冒頭の特殊メイクの老け顔から、若き頃の筋骨隆々な姿を経由し、いつしかお腹周りに贅肉がたっぷり付着した衝撃的な姿に変移していくまで、201分の中で本当にありとあらゆるランビール・カプールの姿を拝むことができる。

『ANIMAL』© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023
思えば、スーパースターになればなるほど周囲による神格化は進み、作品の傾向が偏りがちになり、どうしても演じる役の幅が狭まってしまうもの。そうやって己を窮屈な型にはめ込まないためにも、誰よりも彼自身が、このリスクたっぷりの役どころに飛び込んだ意味は大きい。
加えて、十数年前のインタビュー記事を紐解くと、ランビール自身、幼少期に多忙を極めて一緒の時間を過ごすことのできなかった父(リシ・カプール)との関係性に悩む時期もあったことが伺える(*1)。この父は2020年に白血病のため帰らぬ人となった。
役柄と本人が別物であることは百も承知である。しかし誠実な役作りのアプローチを見せるランビールのこと。自らの中に何らかのリアリティの種を見出し、それを増幅させて役を築き上げていったとしてもなんら不思議はない。我々がこのバケモノのようなキャラクターに慄きつつ、僅かながら血の通いと共感を抱いてしまうのも(抱かない人もいるだろうが)、案外こういった部分に理由があるのではないだろうか。