© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023
『ANIMAL』大ヒット&賛否の嵐が吹き荒れる、父子愛ゆえの血まみれ復讐劇
初めに言っておくと、このボリウッドのヒンディー語映画『ANIMAL』(23)は、全世界で興収91億ルピーを突破。日本円に換算すると約150億円にのぼり、インド国内では、公開初日の興行収入が2023年のヒンディー語映画における第1位を記録。フィルムフェア賞やインド映画アカデミー賞などでも受賞を重ねている。これはもう揺るぎない大成功とみていいだろう。
と同時に、世界で熱狂と批判の賛否両論を巻き起こした。タイトルが象徴するように野性的で、過激で、暴力的なのは紛れもない事実だし、コンプラ的な面(言葉遣い、主人公のアルファ男性的思考、異性に対する振る舞いなど)で観客の神経を逆撫でするところも多分にある。さらに上映時間は怒涛の201分。つまるところ、これらの注意事項を踏まえ、しっかりとシートベルトを締めた上で激流の渦中へ飛び込んでほしい。ただそれだけだ。

『ANIMAL』© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023
Index
時制を操りながら展開する物語
まずは簡単なストーリーを紹介したいのだが、ひとつ厄介なのは本作がたびたび、時制を操りながら語りを展開させていく点である。たとえば序盤にモノクロームで描かれるのは2056年。本作のメインとなる一族が経営する鉄鋼メーカーのスワスティカ社はちょうど創業100周年を迎えているらしい。そこから回想形式で昔話が展開し、かと思えば、さらに回想先でも時制のずらしが度々起こり、時計の針が行ったり来たりする。
201分の壮大なキャンバスを彩る上で、作り手はあえて意表を突き、観客を”置いてけぼり”にする刺激策を採ることで、飽きさせず、かつ油断させないようにしているかのようだ。
というわけで、決して線形には進まない本作は、父の愛情に飢えながら成長した主人公ランヴィジャイの物語。様々な経緯によってアメリカでの生活を続けていたものの、ある日、疎遠になっていた父が襲撃されたと聞くや猛スピードで帰還を遂げ、怒涛の勢いで黒幕が一体誰なのかを暴こうとする。そこから始まる壮絶な殺し合い。築き上げられる屍…。
すべては父への深い敬愛ゆえ。もはや愛情表現がこじれ、ねじ曲がり、止まらなくなってしまった、厄介な意味での不屈な男の復讐暴走劇がここに幕を開けるのである。