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『ANIMAL』大ヒット&賛否の嵐が吹き荒れる、父子愛ゆえの血まみれ復讐劇

© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023

『ANIMAL』大ヒット&賛否の嵐が吹き荒れる、父子愛ゆえの血まみれ復讐劇

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弱さや闇を抱えた主人公を描く



 一方、本作の監督、編集、共同脚本を手掛けたのは、気鋭のサンディープ・レッディ・ヴァンガ。彼はシドニーで映画製作を学び、帰国後、数年かけて実現させたのがテルグ語の長編映画『Arjun Reddy』(17)。酒やドラッグに溺れてゆく主人公を描いたドラマとして高い評価を受け、これは後に自らの手でヒンディー語版としてもリメイクされた。


 もともと子供の頃から、こういったネガティブな要素を抱えた主人公が登場する映画に惹かれていたらしく、本格的に映画を学び始めて、デヴィッド・フィンチャー、マーティン・スコセッシ、スタンリー・キューブリックをはじめとする世界の映画に触れることで、人間的な弱さや共感し得ない個性を併せ持った人物を描いても、観客は最後まで⾒続けてくれるという確信が芽生えたという(プレス資料より)。彼もまた、陰りのある側から人間の本質や根源的な欲求の正体を炙り出そうとする人なのである。



『ANIMAL』© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023



作品から香る、あの歴史的名作の影響



 ちなみに上記の影響を受けた監督陣にコッポラの名は見当たらないが、『ANIMAL』を観ると誰もが『ゴッドファーザー』(72)から受けた濃厚な影響に気づくはず。華やかなパーティーで家族が一堂に会する状況設定や、家長たる父が銃撃されたのを機に主人公が家族のもとに戻ってくる構成も重なる。ただし、中盤以降のランヴィジャイのライオンのたてがみのような髪型は、マイケル・コルレオーネというよりは、むしろ『セルピコ』(73)のパチーノを思わせるものがあるが。


 とはいえ、これはあくまでカタギの鉄鋼一族の物語である。『ゴッドファーザー』のように、マフィアが一族のボスのために命を捧げるコーザ・ノストラの掟や常識とは訳が違う。それにもかかわらず『ANIMAL』の主人公は誰から強いられているわけでもないのに、ただ自ら率先して「父のために!」と倫理の境界線を大きく踏み越え、『キル・ビル』(03,04)の20倍くらいの敵と対峙し、銃やガトリングガンを携えて無慈悲な殺し合いをおっぱじめる。それが子から父への唯一無二の愛情表現だと信じてやまないからこそ、本当に何から何までぶっ壊れていて、厄介だ。


 一族の物語はどこへ向かうのか、暴走した感情の行き着く先はどこなのか、一向に予測がつかない。その上、ここまできたらもうネタバレには当たらないかと思うが、本作は続編企画が進行中だという。混沌のさらに向こう側があるのは驚きだが、ランビール・カプール&サンディープ・レッディ・ヴァンガには下手に甘ったるい着地点を目指すのではなく、とことんやってほしい。我々の価値観をさらに挑発するような新展開を期待したいところである。


*1)https://web.archive.org/web/20131009233647/http://ibnlive.in.com/news/as-a-kid-i-used-to-be-petrified-of-dad-ranbir/49658-8.html?utm_source=ref_article



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る



『ANIMAL』

グランドシネマサンシャイン 池袋、新宿ピカデリーほか全国順次公開中

配給:ギークピクチュアズ

© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023

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