ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus
『そして彼女たちは』5つの軌跡が揺るぎない感動を呼ぶ、巨匠ダルデンヌ兄弟の到達点
幾度も映し出される扉が意味するもの
本作で私がハッとさせられたもの。それは幾度も映し出される”扉”の存在だ。主人公は扉を抜けて内部から外部へと移動を重ねる。開けては閉めての繰り返し。まるでそれが一定のリズムを奏でているようにも見えるし、この一点から多くの気づきを得ることも可能だ。
というのも、もし当人たちがゆっくりと羽根を休ませることのできる家庭や住居に恵まれていたなら、これほど絶え間なく移動し続ける必要はなく、扉の出入りは最小限で済むはず。それがままならない理由があるからこそ、彼女たちはここで暮らしているのだ。

『そして彼女たちは』ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus
扉は母子たちを外部から守るための防御壁である。そして施設内もまた各部屋はプライバシーを守るための扉で隔てられている。当然ながら共有部分と個室とでは彼女たちの表情はガラリと変わる。扉の奥の奥の手狭な空間で、たった一人になった時にだけ、彼女たちは初めて自分の感情をあらわにすることができるわけである。
と同時に、この出たり入ったりの反復動作は、乗り越えるべきいくつもの障壁の象徴でもあるかのよう。そして、もしも自らが困難な状況にある時には、頑なに相手の助けを拒絶するのではなく、心を開いて気持ちを打ち明け合うことも重要だ。扉という存在だけでどれほど重層的な意味が込められているか計り知れない。