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『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜後編〜

『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜後編〜

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困難を極めたステーション内ショット



 このように船外活動の場面はどうにかなったが、難しいのは宇宙ステーションの内部をライアンが移動する場面で、タンクトップとショーツという薄着であるため、CGで作っても違和感がない宇宙服とは条件が異なってくる。そのため、基本的にワイヤーワークで描かれることになった。


 まず、超薄型のカーボンファイバー製ハーネスが開発され、タンクトップとショーツの中に隠しても観客に気付かれない仕組みができた。だが問題は、その吊り方である。「腰2点吊り」では長時間のショットは難しいのだ。なぜならどうしても単純な運動になり、回転軸の存在が観客にバレてしまう。またアクションが止まった時、ブラブラと振り子運動が発生する問題もある。さらに俳優の疲労も激しい。




 そのためコーボルドらは、肩と腰と足首の6点で吊る方式を採用し、合計12本のワイヤーで支えた。個々のワイヤーはサーボモーターと滑車によって制御され、最大秒速75mでサンドラ・ブロックの身体をどの方向にも移動させられた。この画期的な装置により、単純な回転軸が生まれず、振り子運動の発生も防げた。そして、ワイヤーのコントロールはコンピュータ制御の他に手動操作も可能で、舞台版「戦火の馬」で馬のパペットをリアルに動かした操り人形師たちによって行われたそうだ。



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