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『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜後編〜

『ゼロ・グラビティ』から探る、映画における多様な無重力表現 〜後編〜

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映画の背景となった世界情勢



 この映画が企画されたころ、実際の宇宙ではある事件が起きていた。2007年1月11日に、中国が自国の老朽化した気象衛星を弾道ミサイルで破壊する実験を行ったのである。このことは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)が連鎖的に次の衝突を起こすことで、デブリが自己増殖する「ケスラー・シンドローム」の発生が懸念された。だが映画では、衛星破壊実験を行ったのはロシアということになっている。さらに主人公ライアンは、中国の宇宙ステーション「天宮」と宇宙船「神舟」によって命が救われるストーリーだ。これはハリウッドにおける、中国マーケットの重要性を物語っていると言える。




 また『ゼロ・グラビティ』は、3Dを強く意識した作品だった。実際、IMAX 3Dの劇場で鑑賞すると、自分自身も宇宙に投げ出されたような感覚を味わえる。この3D上映に対して、もっとも熱いのが中国の観客で、大型スクリーンの3D上映館が中国国内に次々と作られていた時期でもあった。


 さらに『ゼロ・グラビティ』のVFXを手掛けたロンドンのフレームストア社は、2016年に中国のカルチュラル・インベストメント・ホールディングスに買収されてしまった。



前編はこちらから



文:大口孝之 (おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHK Eテレ『コングラ CGの教室』(18)の監修。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、日藝映画学科、日本電子専門学校などで非常勤講師。かつてNHKスペシャル『宇宙 未知への大紀行』(01)では、有人火星探査船の想定映像(実写とCGの合成)を担当し、無重力の描写に頭を悩ませた経験を持つ。


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『ゼロ・グラビティ』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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