©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』70年代末の空気や熱量を蘇らせ、『アイデン&ティティ』の魂を受け継いだ渾身作!
2026.04.06
構想のヒントをもたらした音楽映画
原作は、地引雄一が自分の目で目撃し、体で感じた当時の音楽シーンを克明に記録した書籍「ストリート・キングダム」。以前から地引と親交のあった田口監督が直接了承を得て、コロナ禍を挟んだ約10年という月日をかけてついに実らせたのが今回の映画だ。
正直言って、私は70年代後半という時代背景やアンダーグラウンドの音楽シーンに関して大した知識を持たず、事前情報ゼロの状態で本作に臨んだ。それでもなお(いや、だからこそ)、ここで描かれる一部始終がとてつもなく面白く、当時の若者たちが他人の物真似ではない唯一無二の音楽を模索するがむしゃらな姿に胸熱くなるものを感じた。
と同時に、鑑賞中ふとこみ上げてきたのが、マイケル・ウィンターボトム監督作『24アワー・パーティー・ピープル』(02)の記憶だ。
史実をもとにしたこの映画では、70年代の終わり、TV司会者トニー・ウィルソンが、マンチェスターを拠点とするファクトリー・レコードの創設や伝説的なクラブ「ハシエンダ」の経営を通じて、ムーブメントを巻き起こしていく。とりわけその冒頭では、1976年にマンチェスターのホールでピストルズのライブを目撃したたった42人の観客の中に、ウィルソンをはじめ、のちのジョイ・ディヴィジョンのメンバーやモリッシーなども含まれていたというエピソードが強烈に描かれる。

『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会
翻って『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』でも、写真家のユーイチの人生はTOKAGEのライブを見たことで劇的に変わる。自分は楽器を弾いたこともないのに、東京ロッカーズのムーブメントに巻き込まれてゆく彼。まっすぐな人柄と少年のように純真な瞳を持った人柄はメンバーからも信頼され、彼はバンドとレコード会社を繋ぐマネージメントのような役割を担っていく。
後日、映画のプレス資料に目を通していたところ、田口監督のお気に入りとして『24アワー・パーティー・ピープル』が挙げられていて私は驚いた。そしてどうやら映画『ストリート・キングダム』は、”東京ロッカーズ”のムーブメントを『24アワー〜』のような群像模様を描いた一作にできるのではないか、という思いから構想が始まったらしい。