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『オールド・オーク』巨匠ケン・ローチが田舎町の小さなパブを通じて突きつける素朴で力強いメッセージ

© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023

『オールド・オーク』巨匠ケン・ローチが田舎町の小さなパブを通じて突きつける素朴で力強いメッセージ

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 1967年の長編デビュー作以来、労働者階級の暮らしに寄り添ってドラマを紡ぎ続けてきたイギリスの巨匠ケン・ローチ。彼の引退作と言われるのがこの『オールド・オーク』(23)だ。


 彼は以前、『ジミー、野を駆ける伝説』(14)の頃にも引退を口にしたことがある。この『ジミー~』は、後期ローチの代表作とも言うべき『麦の穂をゆらす風』(06)で描かれたアイルランド内戦の約10年後の時代情勢に焦点を当て、皆が集い合えるパブリック・ホールの再生をテーマに据えた作品だった。


 すなわち『オールド・オーク』は、再度の引退示唆作というわけだが、ローチの名をこれまた国際的に轟かせた名作『ケス』(69)で描かれた炭鉱町の数十年後を思わせるような、産業が消滅してすっかり勢いを失った町を舞台にしている。そしてまたも場所の活用がテーマに据えられているのは興味深い。ローチと脚本家のポール・ラヴァティにとって「集いの場」とはそれほど大きな意味を持つものなのだろう。



『オールド・オーク』© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023


Index


分断されたコミュニティに立つパブの物語



 物語の時代背景は2010年代。シリア内戦の影響で祖国を脱出した難民たちが、政府の手配したバスでイギリス北東部の小さな町に到着し、地元住民たちはこの受け入れ政策に大きく揺れている。


 もちろん人道支援を惜しまない人もいる。が、一方で極右的な意見を持つ者や、政府がこの産業基盤の乏しい小さな町に難民を押し付けることが許せないと主張する者もいる。また、職や食糧に困窮する人がいるこの町では、まず彼らにこそ手を差し伸べるべきではないかという考え方も根強くある。


 次第にコミュニティは分断され、地元で唯一のパブ「オールド・オーク」でも公然と差別的な発言が聞かれるようになっていく。「どうしたものか」と頭を悩ませる店主のTJ。そんな中、壊れたカメラをめぐってシリア難民のヤラと知り合った彼は、人々の交流を促進し、なおかつ飢えに苦しむ隠れた住民たちを救済するためにも、老朽化した店の一室を開放して炊き出し活動を行うことを思い立つのだが…。




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