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『幸せの、忘れもの。』静けさの中に宿る強さと、異なる感覚世界が交差する瞬間の尊さ

© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE

『幸せの、忘れもの。』静けさの中に宿る強さと、異なる感覚世界が交差する瞬間の尊さ

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観る者一人ひとりに思考の余地を委ねる



 アンヘラのまなざしを通して描かれる世界は、決して特異なものではなく、むしろ私たちが見落としてきた感覚の豊かさに満ちている。触れること、見ること、感じること。その一つひとつが、他者とつながるための重要な手がかりであることを、本作は静かに提示する。言葉に頼らないコミュニケーションの可能性と、その難しさ。その両方を誠実に描き切ることで、作品は観客に深い内省を促す。



『幸せの、忘れもの。』© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE


 『幸せの、忘れもの。』は、声高に主張することなく、それでいて確かな強度をもって観る者に働きかける。母として、パートナーとして、そして一人の人間として揺れ動くアンヘラの姿は、観客自身の経験や感情と共鳴し、静かな余韻を残していく。エバ・リベルタ監督が語る「アンヘラは世界を受け入れる準備ができているが、世界はまだ彼女を受け入れる準備ができていない」という言葉は、この物語の核心を端的に示している。そのギャップをどのように埋めていくのか──本作は明確な答えを提示するのではなく、観る者一人ひとりに思考の余地を委ねる。


 静けさの中に宿る強さと、異なる感覚世界が交差する瞬間の尊さ。本作は、それらを丁寧にすくい取りながら、観客にかけがえのない体験をもたらす。観終えたあと、ふとした沈黙や日常のささやかな感覚が、これまでとは異なる意味を帯びて感じられるはずだ。あなたは、この静かな問いにどう向き合うだろうか。その問いは、観客それぞれの記憶や経験と結びつきながら、やがて自分自身の在り方を見つめ直す契機となっていくはずだ。



文:長友清顕

映画ライター



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作品情報を見る



『幸せの、忘れもの。』

5月1日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開

© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE

配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

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