『海辺の恋』あらすじ
夏の海辺で愛を確かめ合うジュヌヴィエーヴと水兵ダニエル。しかしヴァカンスが終われば、彼は港町ブレストへ、彼女はパリへと戻らなければならない。夏の陽射しを浴びたカラフルな想い出が離れがたく、二人は再会を願って手紙を綴り続ける。そこに、アルジェリア戦争から帰還したもう一人の水兵ギィが加わり、三人の想いは静かに交錯していく。
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息遣いを色彩に変える映画
ギィ・ジルの映画は息遣いに溢れている。四季の息遣い。音楽の息遣い。静物の息遣い。何より女性の息遣い。長編デビュー作『海辺の恋』(64)には、この映画作家が追い続けることになるすべてが揃っている。息遣いの慎ましやかなクローズアップ。ジュヌヴィエーヴ(ジュヌヴィエーヴ・テニエ)の瞳と美しくカールされた睫毛のクローズアップには、高揚と不安がある。マルグリット・デュラスがギィ・ジルの映画について語った言葉は正しい。「顔によって喚起される愛」。ジュヌヴィエーヴの一瞥は、恋することの期待感と同時に、傷つくことに耐えている。彼女は待ち続けている。ドーヴィルの浜辺で出会ったダニエル(ダニエル・ムースマン)に再び会える日を。ダミアの歌うシャンソンが、ジュヌヴィエーヴの住むアパルトマンの壁に反響する。このとき壁はキャンパスとなる。海に消えた恋を歌ったメロディは絵の具となり、ひび割れたコンクリートに浸透していく。息遣いは色彩となる。それは消えない染み跡となる。ダミアの歌声の震えとジュヌヴィエーヴの顔の震えが響き合う。恋の歌が好きだと、彼女は言う。一緒にいる女性が同意する。「音楽と香水は記憶を呼び起こす」と。ギィ・ジルのすべての作品は、この言葉を再現するためにある。

『海辺の恋』©1965 Films Galilée
“ヌーヴェルヴァーグの最年少”と言われたギィ・ジルは、23歳のときに本作を撮っている。才能あふれる若者の長編デビュー作を手助けするために、アラン・ドロン、ジュリエット・グレコ、ジャン=ピエール・レオ、ジャン=クロード・ブリアリといった錚々たるスターたちが友情出演を引き受けている。ロミー・シュナイダーの出演シーンも撮影されたが、最終的に編集でカットされてしまった(ギィ・ジルはこのときのスチールを使った短編を後に発表している)。豪華な客演陣にも関わらず、この作品は配給会社を見つけることができなかった。フランスで公開されたのは撮影の3年後、ヌーヴェルヴァーグの熱狂に翳りが見えた1965年のことだ。1996年にエイズで亡くなるまで、ギィ・ジルはヌーヴェルヴァーグの周縁に留まり続けた。しかし21世紀になり、ギィ・ジルの作品は再評価される。盟友マーシャ・メリルが述べているように、ギィ・ジルは生まれるのが早すぎた映画作家なのかもしれない。
ギィ・ジルのフィルモグラフィーは、初期の短編から『海辺の恋』、『オー・パン・クペ』(67)、『地上の輝き』(70)に至る自伝の要素が滲む作品。そして筆者にとってギィ・ジルの最高傑作である『反復された不在』(72)からデルフィーヌ・セリッグを主演に迎えた『Le Jardin qui Bascule』(75)に代表される、ジャンヌ・モローとの恋愛の影響を受けた時期と、それ以後に大きく分けられる。他にも多くのTV作品やドキュメンタリーを手掛けており、そのどれもが傑出している。特にギィ・ジルの創作のコアであるマルセル・プルーストに関するTV作品『Proust, l'art et la Douleur』(71)と、メキシコで撮ったドキュメンタリー『La Loterie de la Vie』(77)は、極めて美しい作品である。