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『ゼイ・ウィル・キル・ユー』悪魔崇拝の“死なない富裕層”が示唆するもの ※注!ネタバレ含みます

©2026 Warner Bros. Ent. All rights reserved

『ゼイ・ウィル・キル・ユー』悪魔崇拝の“死なない富裕層”が示唆するもの ※注!ネタバレ含みます

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悪魔的なシステムの本質とは



 さて本作が、この老舗ホテルを悪魔の城に設定し、過去の虚飾に満ちた経済的繁栄と失墜、そして決して死なない富裕層の姿を描いた理由は何なのか。それは、ここで風刺されている特権的な搾取構造が、バージルの建物が100年間残り続けたように、現代にもそのまま継続され、格差の拡大がさらに根深いものになっているからだ。


 その象徴的な例として思い出されるのが、2008年の金融危機である。大恐慌に酷似した、サブプライムローン問題に端を発した経済破綻のなか、アメリカの自動車大手「ビッグ3」といわれる大企業のCEOたちは、政府に対し国民の税を原資とした公的資金による救済を求めた。しかし、彼らがそれを懇願しに公聴会に向かう際、自社用のプライベートジェットに乗って議会に出席していたという事実が発覚する。


 会社が潰れかけ、従業員や下請け企業が路頭に迷う瀬戸際で、国民に助けを求めながら、自分たちの特権は手放さないというCEOたちの傲慢な姿。これは、市民の間で怒りの渦を巻き起こした。生活困窮者や労働者の生活がどれほど辛いものになろうとも、富裕層そのものは決して個人的なダメージを負わず、社会のリソースを吸い上げて何度も不条理に復活を遂げる。歴史上、世界中で数限りなく繰り返されてきた“悪魔的なシステム”。これこそが、本作に登場する悪魔崇拝の核心だといえよう。



『ゼイ・ウィル・キル・ユー』©2026 Warner Bros. Ent. All rights reserved


 この閉ざされた城に身一つで乗り込み、刃物を振るう主人公エイジアの戦いは、下層の人間が文字通り肉体を持ってそこに勝負を挑もうとする、一種の階級闘争ともいえる。しかし、本作が最終的に提示するのは、悪人たちを倒せばいいという安易なカタルシスではない。ここで描かれるのは、力のない者が力のある者に対抗して一時的な勝利を収めたとしても、その背後にある社会構造そのものを破壊、変革すること、あるいは逆に利用することができなければ勝利は訪れないという、現実的な実感なのである。


 物語の展開を見れば分かるように、悪魔のシステムは崩壊を迎えながらも、やはりそこに存続し、主人公たちにまとわりつく。人間が生き延びようとすることは、利益をむさぼることでもある。誰もが社会のなかで、無垢なままで完全に清廉に生き抜くことはできない。そういった現実の呪いのなかで、われわれはどう生き抜き、自分の行動に責任を持った正しい生き方ができるのか。本作『ゼイ・ウィル・キル・ユー』は、そこまでを射程に捉えた作品なのではないだろうか。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter:@kmovie




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作品情報を見る



『ゼイ・ウィル・キル・ユー』

大ヒット上映中

配給: 東和ピクチャーズ 東宝

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