(c)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『HELP/復讐島』こんなサム・ライミ作品が観たかった! ブラックユーモアに満ちた快作
笑い者OLとパワハラ社長の立場が無人島で逆転!?
パワハラ上司と耐える部下の逆転の構図、というだけで、そこにはブラックユーモアが宿るが、ライミはそれを漫画的なまでに強調する。オフィスのリンダは同僚間のデートの誘いに、そうとは気づかず口を挟むほど空気が読めない。初出社時のブラッドリーに挨拶しようとするも、食べかけのツナフィッシュを口の脇に付けたまま。はっきり言えば、ダサいキャラだ。一方のブラッドリーは彼女を見下し、大学の同期生でありゴルフ仲間でもある社員を出世させようとしている。新入社員の面接では若い女性の志願者にセクハラまがいの問いを投げかける。徹底的に鼻持ちならない人物として描いているのだ。
そんな導入部だから、観る者は立場の弱いリンダに感情移入するだろう。無人島にたどり着いてからのリンダは、食料や水を手際よく確保し、火を起こし、拠点となる“家”までつくり、頼もしさを発揮。しかしブラッドリーにはサバイバルの知識はなく、パワハラが彼女を屈服させる手段だったが、それが通用する状況ではないことは認めざるをえない。この前半の展開は、いうまでもなく痛快だ。

『HELP/復讐島』(c)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
しかし、ライミのブラックユーモアは、観客を痛快さの上に安住させない。物語の中盤、リンダとブラッドリーは焚火を囲んでお互いの身の上を話し合い、理解し合う……となれば、めでたしめでたしなのだが、そう簡単にはいかない。ブラッドリーが傲慢になった背景には、イビツな家庭環境があったことがわかり、そんなにイヤなヤツでもないかも……と思えてくる。リンダが語った暗い過去も同様だが、それを聞いた観客には同時にある疑問がわいてくるだろう。この人は単なる、かわいそうな被害者ではなく、なんらかの悪意を持った人なんじゃないか?
それがどういうことかは観てもらうとして、リンダとブラッドリーへの感情移入のバランスは確実に揺れ動き、それを証明するかのようなリンダの常軌を逸した行動もこの後描かれていく。観る者を決して落ち着かせない、ライミの底意地の悪さ(?)と言っておこう。