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『シャオ・メイ/ローマ大決戦』カンフーアクションを織り交ぜた、マイネッティ式異文化遭遇ドラマ
2026.06.09
マイネッティ作品の文脈から浮かび上がるもの
ただし、冒頭に挙げたマイネッティ監督の軌跡を踏まえるなら、本作の見どころが決してカンフーだけに留まらないと気づくはず。『皆はこう呼んだ、鋼鉄のジーグ』が単なる模倣ではなく、あくまで日本アニメ「鋼鉄のジーグ」に初めて触れて人生を突き動かされていくイタリア人主人公に焦点が当てられていたように、本作『シャオ・メイ』にもまた、監督自身を投影したかのような「影響を受けて変わっていく自分」が刻印されている。だからこそマイネッティ作品には嘘がないのだ。
その上で重要な鍵を握るのが、もう一人の主人公、イタリア人の調理人マルチェッロの存在だ。メイに行方不明の姉がいるように、マルチェッロの側にもワケありの家族事情がある。情熱的な愛を求め家族を捨てて家を飛び出した父親や、何があろうとも明るく前向きに生きる母親の姿は、数々のイタリア映画が映し出してきた伝統的な家族ドラマのよう。さらに移民たちがせめぎあって生み出す独特の文化や空気感、はたまたそこでうごめく犯罪組織のチンピラや顔役など、次々とイタリア的な要素が流れ込んでいく。

『シャオ・メイ/ローマ大決戦』© 2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
確かに冒頭はカンフー映画として幕を開けながらも、物語が進むにつれて際立つのは、異文化との出会いを通じて何かが変貌していく過程そのものだ。とりわけラストに向けては、主人公の心の移り変わりがあり、世代ごとの思惑があり、宿命的な死闘があり、嘘があり、裏切りがあり、これらを「愛」というテーマが大きく包み込む。かくも様々な要素を織り混ぜて人間模様を高らかに歌い上げる感じは(実際に歌うわけではないが)、言うならばオペラ的な構造に近いかもしれない。
それゆえ、本作は「イタリアン・カンフー映画」と呼ぶよりは、むしろ「カンフーアクションもある、マイネッティ式異文化遭遇ドラマ」と呼んだ方が私的にしっくりくる。
ともかく、彼は今回もジャンル映画を巡る怖いもの知らずの野心を胸に、無謀とも言える橋を堂々と渡り切った。はたして次なる目的地はどこなのか。現時点では想像もつかないが、きっと「あっ!」と言わせる新境地で我々を揺さぶり、魅了してくれるに違いない。
参考:
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
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配給:インターフィルム
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