『NEW GROUP』あらすじ
愛は引っ込み思案な普通の女子高生。家族に問題を抱えている。ある日、転校生の優がやってきた。海外帰りの優は日本の学校の集団行動に馴染めない。愛は優のことが気になるが、自分をなかなか出せない愛に優はいら立ちを感じていた。そんなある日、校庭で一人の生徒が四つん這いになり、動かなくなった。教師や友人が止めようとしても動かない。そして、時間を追うごとにその生徒の横に同じように四つん這いになる生徒が並び始めた。不思議なことに学校も人間ピラミッドを“良いもの”として参加を勧めている。そして、積み重なった生徒たちはみな一様に穏やかな表情を浮かべている。生徒たちはどんどん集まり、集まってくる生徒たちはものも言わず従っていく。愛もなぜか、朦朧となり、ピラミッドに加わりそうになる。これは、その後地域全体を巻き込む、集団怪現象の始まりに過ぎなかった─。
Index
“思考停止”のコズミック・ホラー
KADOKAWA主催の「第1回日本ホラー映画大賞」で見事大賞を受賞し、映画界に彗星のごとく現れた気鋭のクリエイター・下津優太。彼の商業デビュー作となった『みなに幸あれ』(24)は、「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というムラ社会的な同調圧力を、不条理ホラーとして描き出した衝撃作だった。
それから2年。劇場公開第2作となる『NEW GROUP』(26)で、下津監督はこの同調圧力という無自覚な暴力を、さらにマクロな視点へと拡張。アリ・アスター監督の『ミッドサマー』(19)や、ジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』(22)にもヒケをとらないくらいの、突然変異的怪作が仕上がった。
舞台となるのは、どこにでもあるようなごく普通の高校。ある日、引っ込み思案な主人公・愛(山田杏奈)と、転校生・優(青木柚)の目の前で、グラウンドの生徒たちが巨大な人間ピラミッドを形成し始める。このあまりにもシュールで異様な光景は、やがて地域全体、ひいては日本中を巻き込む怪現象へと、雪だるま式に発展していく。

『NEW GROUP』©2026映画「NEW GROUP」製作委員会
監督がこの奇天烈設定を着想したきっかけは、社会学の入門書に書かれていた「この社会は家族、学校、会社、地域、国家といった様々な集団でできている」という一節だったという。そして、ゾンビのように無秩序で不規則な群れではなく、徹底的に規律の取れた集団の方がはるかに不気味なのでは?と想像を巡らし、校庭にそびえ立つ人間ピラミッドのアイディアが生まれた。
そもそも組体操という身体表現は、富国強兵を掲げた明治以降の軍事教練のように、個人の肉体を集団の部品へと作り変える訓練として利用されてきた歴史がある。意思を持たないモンスターが日常を侵食していく様はパニックホラーの定石だが、本作の集団は寸分の狂いもなく美しく、完璧に規律が取れているからこそ恐ろしい。
ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(78)におけるリビング・デッドたちが、ショッピングモールに群がる「資本主義の無自覚な消費者」のメタファーであったのに対し、本作の組体操は、組織の歯車になることで多幸感を見出す「幸福な奴隷」のメタファー。彼らが一様に幸せそうなのは、自我を守ろうと必死に抗うのではなく、むしろ思考することを自ら放棄し、組織の指示に従うだけの楽さに完全依存しているからだ。
ピエール瀧演じる校長が「集団はあなた方に幸せを与えますよ」と不気味に囁くように、「個を埋没させることに安堵を覚える」心理的傾向を、本作はコズミック・ホラーへと見事に反転させている。