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『黒牢城』黒沢清の本格的時代劇が映す、世界のありよう

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会

『黒牢城』黒沢清の本格的時代劇が映す、世界のありよう

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『工場の出口』を思わせる冒頭場面



 『黒牢城』の冒頭で開け放たれた門は、『工場の出口』での工場の門だ。描かれるのは門を閉じた後の時間であり、門の「内」側の話が時の経過とともに展開される。しかし門を閉じた後の時間=現在があるならば、当然それを閉じる前の時間=過去も存在する。そして門を開いた後の時間=未来もまた。その意味で、これは門の内側を描きながら、画面には決して映らない外側を映した映画なのだ。


 実際、この室内劇には外部を意識させる描写が溢れている。画面には門に加えて、外を見張るための矢倉がしばしば映り込む。城の外から飛んでくる矢文が騒動を巻き起こし、外からの来訪者が時局の変化をその都度村重に伝える。


 そもそも黒田官兵衛が外からの来訪者としてこの城を訪れたのが、物語の始まりだ。本来使者は、無事に帰されるか、その場で殺されるかのどちらかの選択肢しかないはずだった。ところが「人質や使者を殺さず、生かす」方針を貫く村重は、官兵衛を地下牢に繋げと命じる。死者が帰らなければ寝返ったと思われる。家の名誉を守るためにも自分を殺せと官兵衛が迫っても、村重は聞こうとしない。こうして官兵衛は、黒沢監督の近作『蛇の道』にも登場する長い鎖で暗い地下牢に繋がれる。



『黒牢城』©米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会


 皮肉にも、城のいちばん内奥に繋がれ、移動を禁じられた彼こそが、誰より遠くまで見渡せる人物として重要な役割を果たすことになる。官兵衛は檻の中から、城で起こるあらゆる事態を観察し、探偵役として次々に起こる怪事件の謎を解き、また織田との戦いの行方について誰より的確な助言を授ける。


 もっとも「内」にある者がもっとも「外」に通じる者である。この一見矛盾して見える構造が適用されるのは、官兵衛だけにとどまらない。村重の周囲には、家臣を中心に大勢の人々が生活している。そのなかで、誰が開かれた外の世界を村重に見せてくれるのか。それは、実は意外な人物であるかもしれない。

 

 



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