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『黒牢城』黒沢清の本格的時代劇が映す、世界のありよう

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会

『黒牢城』黒沢清の本格的時代劇が映す、世界のありよう

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『黒牢城』あらすじ

有岡城の城主・荒木村重(本木雅弘)は、織田信長に謀反を起こし、家臣とともに城に立て篭もる。味方が減り徐々に追い詰められていくなか、やがて城内では不審な事件が起こり始める。頭を悩ませた村重は、織田側の使者として城に現れて以来地下牢に幽閉されていた軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)の助けを借りることに。官兵衛の天才的な頭脳によって事件は次々に解決していくが、一方で城を取り巻く戦況はますます厳しいものとなり……。

 

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チャンバラ劇とは異なるアクション映画



 画面いっぱいに広がった門が開き、商人らしき人々が画面の手前から奥へと速足で駆けていく。その反対側からは、武具を身につけた武士たちがゆっくりと歩いてくる。


 時は戦国時代。荒木村重が城主を務める有岡城では今まさに籠城の支度が進められているのだと、字幕によって説明される。とすれば、冒頭に出てきた人々は、食糧や日用品を売りにきた商人だろうか。武士たちは合戦を終え城に帰ってきたところかもしれない。開いた門を通じてすれ違う両者の、どちらが城の外からやってきて、どちらが中からやってきたのか、一瞬ではよくわからないが、聳え立つ門によってある事実が明確に示される。ここには城の「外」と「内」という二種類の世界があり、これから描かれるのはその「内」側の世界だと。


 黒沢清監督の最新作『黒牢城』(26)は、米澤穂信のミステリー小説を原作に、村重とその家臣たちが城内で過ごす冬から秋までの時間を描く。『スパイの妻』(20)で第二次世界大戦下の日本を描いたとはいえ、大勢の侍たちが闊歩する戦国時代を舞台にするのは黒沢監督にとっても初めてのこと。だが侍たちが主人公といってもチャンバラ劇ではない。物語の中心となるのは、城の中で起こるさまざまな怪事件。これは、村重が地下に幽閉した軍師・黒田官兵衛の知恵を借りながら事件解決に挑む、いわば謎解きの物語だ。



『黒牢城』©米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会


 村重という人物は、籠城のあと、家族や家臣が残る城を見捨てて逃げた卑怯者として多く語られてきた。城に残された家臣たちは織田信長の手で大勢虐殺され、一方の村重はその後も長く生き続けた。黒田官兵衛が有岡城に長く幽閉されていたのも事実で、彼はその後豊臣秀吉のもとで軍師として力を発揮した。小説「黒牢城」は、この史実をもとに、その裏側で起きたかもしれない出来事をフィクションとして描く。そして映画は、台詞から登場人物の設定、物語の構造まで、驚くほど忠実にこの小説を映像化していく。


 ほぼ室内でのみ展開される時代劇であり、大きなアクションはほぼ描かれず、謎解きは基本的に会話によってなされていく。物語の中心となるのは、黒沢映画にはこれが初出演となる本木雅弘演じる村重と、前作『Cloud クラウド』(24)から引き続きの出演となった菅田将暉演じる官兵衛の駆け引きめいたやりとりだ。その周囲を、大勢の家臣や、村重の年の離れた側室・千代保(吉高由里子)らが取り囲み、画面のあちこちを、城下で生きる町人や農民たちが行き来する。『Cloud クラウド』も手がけた撮影監督・佐々木靖之のカメラは、深い奥行きをもって城内のさまざまな場所を映し、ときには移動撮影を使い、大きな群れとなって動く人々の姿を浮かび上がらせる。そうして、画面のあちこちで蠢くそれらの暗い影が、チャンバラ劇とは全く違う、ある種のアクションを立ち上げる。





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