ピクサー流エンターテインメントが描く「不安」
本作『トイ・ストーリー5』は、ジェシーの奮闘を軸に、ウッディとバズが繰り広げる冒険、そしてハイテク・バズ集団の旅が並行して描かれるトリッキーな構造。それでもディズニー&ピクサー作品らしい、なんといっても『トイ・ストーリー』シリーズらしい、純然たるエンターテインメント映画に仕上がっている。
おもちゃたちが人間にバレないよう冒険に繰り出すスリルとアクション、ユーモア。おもちゃの視点から見た人間世界で起きるスペクタクル。計画を立て、走り回り、思わぬ事態に直面し――新旧キャラクターたちが織りなすアンサンブルはもちろん健在だ。あるシーンでは、新たなアニメーションのスタイルで彼らが描かれることへの新鮮な驚きもある。
もっとも、そうした軽やかさを通して本作が扱うのは、きわめて現代的なテクノロジーに対する不安と、普遍的な人間存在の不安だ。今回の主人公であるジェシーは、『トイ・ストーリー2』(99)で描かれたように、エミリーという女の子に愛され、手放された過去から今も逃れられずにいる。

『トイ・ストーリー5』(C)2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
子どもは成長する。大切だったはずのおもちゃを箱の中にしまい、忘れてしまう。その事実をよく知るジェシーにとって、ボニーがリリーパッドに惹かれてゆくことは、保安官としての、また自分自身の実存にも関わる危機だ。再び自分は役目を終え、愛されなくなるのではないか……。ジェシーはボニーを助けたい一方で、彼女が自分から離れてゆくことを深く恐れている。
『トイ・ストーリー』で描かれるアナログのおもちゃは、シリーズの歳月とともに、子どもたちの親友であり、彼らの成長を見守る親のような存在になった。本作はその二重性を、ジェシーの過去と現在をめぐる物語のなかであぶり出す。
ただし本作が巧みなのは、そうした役目を終えることの宿命と悲しみを、ジェシーというアナログのおもちゃだけに託していないところだ。
最新デバイスであるリリーパッドに対して登場するのは、ジェシーが昔の持ち主の家で出会う、“かつての最新テクノロジー”であるデジタル玩具たち。トイレ教育用のおもちゃスマーティー・パンツ、GPSを搭載するマップおもちゃのアトラス、デジカメおもちゃのスナッピーは、家の片隅ですっかり忘れられている。
アナログのおもちゃ、旧式のデジタルおもちゃ、そして最新のタブレット。急速に進化を遂げ、すぐに“古いもの”になってしまうデジタルおもちゃは、アナログのおもちゃよりも子どもにとっての有効期限が短い。本作は「おもちゃ vs テクノロジー」の構図をとりつつ、実際はその対立構造を超えて、それぞれ異なる時間の層を描きこんでいる。