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『ズートピア2』ディズニー・アニメがネクストレベルで描く、アメリカの本質

(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『ズートピア2』ディズニー・アニメがネクストレベルで描く、アメリカの本質

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『ズートピア2』あらすじ

動物たちが人間のように暮らす夢の都市“ズートピア”。頑張り屋なウサギの警察官・ジュディと、皮肉屋だけど根はやさしいキツネのニックは、憧れの捜査官バディとして事件に挑んでいた。ある日、ズートピアにいないはずのヘビのゲイリーが現れたことで、その誕生の裏に隠された驚くべき秘密が明らかに。なぜ、この街には哺乳類しかいないのか?ヘビたちが姿を消した理由とは?ズートピア最大の謎を前に、正反対なジュディとニックの絆が試される―。


Index


ディズニー・アニメのネクストレベル



 ディズニー・アニメーション・スタジオの『ズートピア2』の勢いが凄まじい。日本公開を待たずして、初週末5日間の興行収入が約5億5,600万ドルに到達。2025年トップのオープニング成績を飾っただけではなく、アニメーション映画でも史上最高のオープニング興収を記録したのだ。日本でも公開が始まった現在、日本における洋画アニメーション映画初日公開記録を打ち立てている。


 そこで意外なのは、前作『ズートピア』も含め本シリーズが、警察官による犯罪捜査と、政治的な腐敗や陰謀に切り込んでいく内容であること。まさにジェイムズ・エルロイの書くノワール小説のような硬派なストーリーなのだ。かわいい動物キャラクターたちが活躍する点が観客の心をつかんでいる面があるとはいえ、そんな作品がアニメ史上トップとなる成績を収めたというのは、ある意味で衝撃である。



『ズートピア2』(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


 『ズートピア』シリーズがここで成し遂げているのは、通常ならファミリー層には相応しくないと考えられているジャンルを、幅広い層が楽しめるように味付けしただけでなく、描かれる社会的テーマの深刻性をもスポイルしていないということだ。同時に、魅力的な動物たちの活躍という、二重の楽しみ方を設定していることが、奥行きに幅広さを加えている。


 ディズニー・アニメーションといえば、これまで可愛い動物のキャラクターたちが画面を華やかに彩ってきた。なかでもウサギのキャラクターは愛らしく描かれ、『白雪姫』(37)で主人公を慰めるウサギたちや、『バンビ』(42)に登場する“とんすけ”たちなど、まさにキュートさの表現の限界に挑戦してきた。これは、本作で美術監督を務め、前作でキャラクターデザインを担当したコーリー・ロフティスを中心に、超絶的な技術と創造性を持つディズニーのアーティストたちに支えられている。その意味で主人公のジュディは、プリンセス以外のディズニーキャラクターの魅力の大きな一面を体現する存在だといえる。


 従来、哺乳類の毛皮の“モフモフ”表現は、毛を一本一本まで描画するという膨大な情報量を必要とするため、CGアニメーションでは鬼門とされていた。かつてディズニーとピクサー製作の『モンスターズ・インク』(01)は、技術革新によってその弱点を突破した。こうした進化は現在も続いているが、本作『ズートピア2』では、オオヤマネコのキャラクター、パウバートの毛並み表現などが、その最新形として披露される。従来のディズニーの“可愛さ”にネクストレベルの追求が加わったことが、シリーズ人気の原動力の一つとなっている。



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