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『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。
2022.05.28
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』あらすじ
舞台は現代のロサンゼルス―子供の頃からの親友チップとデールはショービジネスで成功することを夢見て下積み時代を送り、見事『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』シリーズが大ヒット、一世を風靡しスターの階段を駆け上ることに。しかしデールが自分の番組を始めると言い出したせいでシリーズは打ち切り、2人の人生は一変してしまう―その後チップは郊外で保険会社のセールスマンとして勤め、デールはCG手術を受け、懐かしのスター達が集まるノスタルジア・コンベンション・サーキットで働きながら、昔の栄光に思いを馳せていた。そんな中かつてのレスキュー・レンジャーズの仲間モンティがチーズ依存症で借金を重ね、ついには誘拐されてしまう事件が発生。2人は彼を救うべく“レスキュー・レンジャーズ”として復活。その頃モンティだけではなく、多くのアニメーションキャラクター達が次々と誘拐される不可解な事件が多発しており、その陰にはギャングのボス、スウィート・ピートの怪しい影が潜んでいた…。チップとデールは捜査に乗り出すも、シリーズを打ち切りにしたデールを恨むチップと、過去の栄光にすがり破天荒なまま変わらないデールが衝突し、“大波乱”を予感させる冒険がスタート。
Index
- 『ブリグズビー・ベア』『パーム・スプリングス』チームの新作
- チップとデールが「役者だった」という新解釈
- アニメや実写が「個性」として混在・共存する世界観
- コンテンツの消費に対するシニカルな目線
- パロディ描写に漂う「風化させない」という想い
『ブリグズビー・ベア』『パーム・スプリングス』チームの新作
NetflixやAmazon Prime Video、U-NEXTといった日本国内で視聴可能な動画配信サービスの中で、後発ながら急速に影響力を強めているディズニープラス。
ディズニーアニメにピクサー作品、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に『スター・ウォーズ』といったコンテンツ力の高さが強みで、2021年からは新ブランド「スター」が追加。FOX関連の作品に加え、国内のドラマやアニメも視聴可能に。『ガンニバル』『拾われた男』『四畳半タイムマシンブルース』『サマータイムレンダ』といったオリジナル作品を独占配信する。今後ますます“配信戦国時代”は複雑化していきそうだ。
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)がディズニープラス作品『ワンダヴィジョン』に直結していたり(これまでも劇場作品とディズニープラス作品のリンクはあったが、よりがっつりつながった形)、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ『オビ=ワン・ケノービ』が5月27日に配信スタートしたりと、話題に事欠かないディズニープラス。その新作であり、観賞者の間で話題を集めているのが映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』だ。
『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』予告
5月20日から配信開始された本作、タイトルだけ見るとあのチップとデールの物語なのだが、スタッフに目を向けていただきたい。監督はアキヴァ・シェイファー、主人公のデール役はアンディ・サムバーグ。3人組コメディグループ「ザ・ロンリー・アイランド」の面々が作り上げた作品なのだ(ヨーマ・タコンヌも声優で参加)。彼らは人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」でブレイクしたトリオであり、もう一人の主人公チップ役のジョン・ムレイニーは「サタデー・ナイト・ライブ」の脚本家でもある。となれば、ストレートな作品にはならなさそうだ、という予測が立つのではないか。
ちなみに、ザ・ロンリー・アイランドが過去手がけた映画には、悪ノリと業界ネタ全開の『俺たちポップスター』(16)や、日本でも映画好きの支持を集めた『ブリグズビー・ベア』(17)、サンダンス映画祭で史上最高売買額(2020年当時)を記録した『パーム・スプリングス』などがある。
ちなみに『ブリグズビー・ベア』の原案・主演俳優のカイル・ムーニーも「サタデー・ナイト・ライブ」の出演者。こちらは、誘拐犯に育てられ、教育番組だけを見て育った主人公の物語だ。『パーム・スプリングス』はタイムリープものの新解釈といえるラブコメSF。2作品とも、アイデア性の高い映画といえるだろう。そういった作品を送り出してきた面々による『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』もまた、これまでの“常識”にとらわれない1本となった。予想外の内容に、驚いた視聴者も多かったのではないだろうか。