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『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

(C)2022 Disney Enterprises. Inc.

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

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コンテンツの消費に対するシニカルな目線



 『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』では、様々な見た目の生物が共同体として社会を作り上げていくさまを描きつつ、反動としてコンテンツが消費されるエグさに言及していく。


 ここで効いてくるのが、チップやデールが役者だったという設定。これは他の作品にも言え、キャラクターという“出演者”たちの需要が廃れていくことで何が起こるか、がシニカルに示される。本作にはディズニーはもちろん、様々なスタジオのキャラクターが無数に登場する。その筆頭といえるのが、アグリー・ソニックだ。


 元々、現実世界で映画『ソニック・ザ・ムービー』(20)のソニックの初期デザインが公開されるや世界中で大不評を浴び、修正されたという“事件”があったが、本作では「選ばれなかった」ソニックとしてアグリー・ソニックを登場させている。つまり、『ソニック・ザ・ムービー』に登場するソニックと、アグリー・ソニックは“別人”という設定なのだ。


 劇中には他にも、人気が取れなかった/取れなくなって没落した“タレント”たちがごまんと登場(反対に、人気が再燃した者も)。その中のひとりが、今回の敵役であるスウィート・ピートだ。中盤で明かされる彼の正体は、ピーター・パン。永遠の少年を“演じていた”彼は年齢が上がっていくにつれて必要とされなくなり、ショービズ界から締め出されてしまう。



『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』(C)2022 Disney Enterprises. Inc.


 そして彼が手を付けたのは、海賊版の制作。自分と同じように不要とされ、借金で首が回らなくなったタレントたちを整形して、「海賊版」として新作を製作していたのだ(或いは海外の闇スタジオに売り飛ばす)。失踪した仲間モンタリー・ジャックを捜索するチップとデールはやがて、スウィート・ピートとの対決を余儀なくされていく。いわば、スウィート・ピートはチップとデールが「そうなっていたかもしれない」なれの果てというわけ。この鏡合わせの構造がなんとも悲しく、逆説的にスウィート・ピートとチップとデールの違いが際立っていく。


 過去の栄光にすがり、再浮上を願うデール(毎日のようにライブ配信をして虚勢を張る姿が切ない)と、彼に裏切られたことを根に持つチップ。両者の間には溝があるが、チップとデールが和解し、対等な関係になっていくことで各々が“歯止め”として機能していく。一方、スウィート・ピートの場合は手下や共犯者たちが彼の行動を助長させていく。ブレーキとなるか、アクセルとなるか。同じくショービズ界に身を置いていた両者が、とどまる/堕ちるで分かれていく姿は、実に寓話的だ。




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