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『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

(C)2022 Disney Enterprises. Inc.

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

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アニメや実写が「個性」として混在・共存する世界観



 2Dのキャラクターが実写の中に入り込む世界観といえば、『スペース・ジャム』(96)や近年だと『トムとジェリー』(21)などが挙げられるが、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』はその進化系といえる。


 本作は、1982年の小学校の登校シーンから始まるのだが、生徒は2Dアニメーションと実写が混在している。ここでよくあるのは2Dアニメーションの「キャラクター」が人間世界=実写で生きている、という設定だが、2Dアニメーションの生徒の中にはチップやデールのような動物に加えて、人間も確認できる。つまりこれがどういうことかというと、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の世界では“タイプ”の違いとして描かれているということ。


 例えば人間であれば、人種のパターンとして「2Dアニメーション」「CGアニメーション」「マペット」といったものがある、といった感覚だ。劇中に登場するマスコミには「3D専門のメディア」「モノクロ専門のメディア」といったものも登場。映画史における様々な表現を、その一個人/個体の“個性”として扱っているのが興味深い。もっといえば、他のタイプへと“整形”も可能で、デールは低迷する状況を何とかしようと「時代に合わせて」CG手術を受ける。その結果、2Dアニメーションのままのチップとの凸凹コンビぶりが視覚的にも生まれていくのが上手い。



『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』(C)2022 Disney Enterprises. Inc.


 人間が死後に意識をデジタル空間にアップロードし、アバターとして第2の人生を過ごすドラマ『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』には、若き日の自分の写真をアバターにした結果モノクロになった女性が登場する。本作もまた、生来の自分が2Dであれ、手術を受けることで自身の見た目を“選択”できるという設定が敷かれている。


 『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』では、それぞれがその世界(宇宙)にマッチしたスタイルで存在しており、その表現としてタッチの違いが使われていたが、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』では単一宇宙の中に共存している。見た目の違いが“異物”として扱われるのではなく、「みんな違うのが普通」「切り替えも可能」となった世界(実際に学校や職場でも見た目が異なる面々が区別されることなく共存している)という意味では、本作は非常に開かれているといえるのかもしれない。


 ただ、「見た目」に依存する人々がいなくなったわけではなく、むしろその逆。デールが「全身をCG化すれば人気を獲得できる」と考えたように、「他者からどう見られるか/飽きられること」といった残酷なテーマが、ショービズ界の世知辛さとともに描かれていく。そのキーワードとなるのが、先ほど軽く触れた「海賊版」だ。




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