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『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

(C)2022 Disney Enterprises. Inc.

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』に漂う毒気。「消費」された者たちの“その後” ※注!ネタバレ含みます。

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パロディ描写に漂う「風化させない」という想い



 『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の劇中には、『ジュラシック・パーク』や『スター・ウォーズ』へのオマージュや、古今東西のキャラクターが無数に登場する。中には悪ノリ感が漂う描かれ方をしているものもあるのだが、観ているうちに単なるお遊びで片付けられなくなっていく点が秀逸だ。


 例えば、『ワイルド・スピード』シリーズの幼児版『ワイルドベイビー』や、『ミセス・ダウト』の続編?的な『ミスター・ダウト』(メリル・ストリープが主演)、『バットマン VS E.T.』といった作品が登場。出てきた瞬間は笑えるのだが、ここには「過去にヒットしたコンテンツの焼き直しばかり」といった業界的な問題意識が込められている。売れたコンテンツは擦り切れるまで酷使し、数字が出なくなった瞬間にポイ捨てするという意味でも、ただのパロディとして笑い飛ばせない闇深さがそこには流れている(チップとデールの再ブレイクの匂いを嗅ぎつけるや、数年ぶりに突然連絡してくるエージェント/プロデューサー含め)。



『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』(C)2022 Disney Enterprises. Inc.


 『トイ・ストーリー4』(19)でおもちゃが人間からの独立を目指すという展開は、賛否も含めて様々な反応が出たと聞く。本シリーズでは『トイ・ストーリー』(95)で“魔改造”されるおもちゃ、『トイ・ストーリー2』(99)ではコレクターのもとで愛でられるのが幸せとするおもちゃ、『トイ・ストーリー3』(10)では持ち主に捨てられたおもちゃが登場。例外はあれど、おもちゃと人間の関係が期限付きのものであり、永続的なものではない=消費ととらえるのであれば、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』にも通じるものがあるかもしれない。


 本作には、売れずに大量に在庫が余っているキャラクターグッズを別のものに作り替えて“再利用”するシーンがある。スウィート・ピートの行動理念も、犯罪行為ではあれど根底に「消費されて捨てられた」という過去があると考えると、何とも言えない暗澹たる気持ちが広がるのではないか。


 『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の劇中に登場するオマージュの数々や、無数の過去作品のキャラクターたち。そこには、栄枯盛衰のショービズ界を生き抜いてきた作り手たちによる、陽の光を浴びられなくなった者・物たち/いずれそうなってしまうかもしれない者・物たちを忘れさせたくない――という想いがあるのかもしれない。



取材・文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema



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