1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 海辺の一日
  4. 『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。
『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。

© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。

PAGES


台湾ニューシネマとクリストファー・ドイル――『海辺の一日』が立つ“映画史の交差点”



 『海辺の一日』は、台湾ニューシネマ(「台湾ニューウェーヴ」とも呼ぶ)の重要な初期作として必ず名が挙がる。台湾ニューシネマとは、1980年代に若い映画人たちが商業主義から距離を置き、台湾社会の現実を深く掘り下げる映画を志した運動であり、フランスのヌーヴェルヴァーグに相当する新潮流だった。その嚆矢となったのが、1982年のオムニバス映画『光陰的故事』である。エドワード・ヤン、タオ・ドゥツェン、クー・イーチェン、チャン・イーら4人の新人監督が参加し、台湾映画の地殻変動を告げた。


 『海辺の一日』は、その翌年に登場したヤンの長編デビュー作であり、台湾ニューシネマの精神がもっとも濃密に結晶した作品でもある。ホウ・シャオシェン、ウー・ニェンツェン、クー・イーチェンら、のちに台湾映画を牽引する作家たちが総出演し、共同脚本はウー・ニェンツェンが務めた(彼はのちに『ヤンヤン 夏の想い出』にも出演)。ホウ・シャオシェンはヤンの『台北ストーリー』で主演級の大役を務め、ヤン自身もホウの『冬冬の夏休み』(84)に出演している。台湾映画史の主要人物たちが互いに交差する“場”として、『海辺の一日』は特別な位置にある。



『海辺の一日 4Kレストア』© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.


 そして本作は、もうひとつの映画史的事件を内包している。のちにウォン・カーウァイ作品―― 『欲望の翼』(90)、『恋する惑星』(94)、『天使の涙』(95)、『ブエノスアイレス』(97)、『花様年華』(00)などで世界的名声を得る撮影監督クリストファー・ドイルの長編撮影デビュー作なのだ。


 ヤンが強く望んで起用したというドイルは、『海辺の一日』で1983年アジア太平洋映画祭の最優秀撮影賞を受賞する。すでに並外れてフォトジェニックな強度を発揮しており、湿度を帯びた台北の空気、都市の光と影、人物の距離感――ウォン・カーウァイとの黄金コンビを予感させる最初の奇跡がここにある。


 こうして『海辺の一日』は、台湾ニューシネマの胎動と、クリストファー・ドイルの誕生という二つの映画史的潮流が交差する一点としても、唯一無二の輝きを放つ。そしてもちろんエドワード・ヤンのあまりに眩いフィモグラフィ――『台北ストーリー』や『恐怖分子』、『エドワード・ヤンの恋愛時代』、『ヤンヤン 夏の想い出』等へと続く一本道の本格的なスタート地点であり、すでに破格の到達点を予感させる堂々の傑作でもあるのだ。いま観るべき理由は、あまりに多い。



文:森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「シネマトゥデイ」「Numero.jp」「Safari Online」などで定期的に執筆中。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」でMC担当。



『海辺の一日 4Kレストア』を今すぐ予約する↓




作品情報を見る



『海辺の一日 4Kレストア』

提供:JAIHO 配給:TWIN 

配給宣伝:グッチーズ・フリースクール  

Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、角川シネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国公開中

© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 海辺の一日
  4. 『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。