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『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。

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『海辺の一日』“エドワード・ヤン・ユニバース”最初の大物映画が、ついに4Kレストア版で甦る。

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 台湾映画のみならず、現代映画の地平を決定的に変えた鬼才、エドワード・ヤン(楊德昌)。1947年上海生まれ、1歳3ヶ月で台北に移住し、2007年米ビバリーヒルズの自宅で死去した。享年59歳という若さだったが、その評価は没後ますます高まり、2023年には台湾で大回顧展「一一重構:楊德昌」が開催されるなど、“現役”のシネアストとして世界的な再発見が進んでいる。


 彼が遺した長編映画はわずか7作。その多くが権利問題で長らく“幻”となっていたが、デジタルレストア化の波が状況を一変させた。『恐怖分子』(86)、『牯嶺街少年殺人事件』(91)、『台北ストーリー』(85)、『エドワード・ヤンの恋愛時代』(94)、『カップルズ』(96)、『ヤンヤン 夏の想い出』(00)と、次々にレストア版が世界を巡回。 そして2026年7月10日(金)、ついに長編映画デビュー作『海辺の一日』(83)が4Kレストア版として日本初の一般劇場公開を迎える。


 なお本作は、2007年の第20回東京国際映画祭「アジアの風」部門の追悼特集でも上映され、ヤンの急逝を悼む特別プログラムの中心に据えられた。テレビシリーズ『十一個女人』の挿話『浮草』(81)、オムニバス映画『光陰的故事』の一篇『指望』(82)に続く“原点”が、ついに本格的な劇場公開として戻ってくる。



『海辺の一日 4Kレストア』© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.



『海辺の一日』あらすじ

佳莉(ジャーリィ)は、小さな町の医師の娘として、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育った。父の権威に逆らえず、愛を失っていく兄・佳森(ジャーセン)の姿は、彼女に深い衝撃を与える。やがて佳莉は、父が望む結婚を拒み、同級生の徳偉(ドゥウェイ)との結婚を選んで家を出る。一方、佳森の元恋人である蔚青(ウェイチン)は、留学先のオーストリアから帰国した才能あるピアニストとして活躍していた。佳莉の自由な決断に憧れを抱いていた彼女だったが、佳莉の結婚生活は、次第に理想とかけ離れたものになっていく。ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。そこで彼女は、夫との歳月、自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合い始める。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められていた時間が、少しずつ姿を現していく。


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原点としての『海辺の一日』――「作家は処女作に向かって成熟する」(亀井勝一郎)



 文芸評論家・亀井勝一郎(1907年生~1966年没)の言葉に「作家は処女作に向かって成熟する」というものがある。エドワード・ヤンの場合、この言葉は驚くほど的確だ。なぜなら1983年の長編映画デビュー作『海辺の一日』に、のちの全作品を貫く主題がすでに揃っているからだ。


 尺は167分。製作会社から短縮を求められながら、ヤンは「1分たりとも切らない」と拒否したらしい。物語はラジオから流れるベートーヴェンのピアノ協奏曲に導かれて、13年ぶりに再会した二人の女性――オーストリアから台湾に帰国したピアニストのウェイチン(フー・インモン)と、彼女の元恋人の妹である旧友ジャーリィ(シルヴィア・チャン)の会話から始まる。この“現在の一日”を起点に、“海辺の一日”(英語題“That Day, on the Beach”)を含む怒涛の十数年の変遷が記憶の層として立ち上がる。


 実はエドワード・ヤンの長編映画7作の中で、回想形式を用いるのは『海辺の一日』だけだ。本作では複数の主体が連鎖して入れ替わるように、相当大胆なフラッシュバック手法が用いられる。ジャーリィの記憶を超えて過去の光景が立ちのぼる変則的な“意識の流れ”は、台北という都市に刻まれた集合的記憶を表すようにも見える。だが次作『台北ストーリー』以降、ヤンは一切フラッシュバックを使わなくなった。つまり『海辺の一日』は、ヤンが“記憶”というテーマを最も直接的に扱った作品であり、同時にのちの『ヤンヤン 夏の想い出』へと至る「時間・記憶・家族」の大テーマが、すでに鮮烈に提示されている。





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