2026.07.23
※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。
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深い悲しみと喪失感を題材に
YouTubeの人気配信者としての出自を持ち、流血描写やエクストリームな表現を軽快なテンポ感で提供して、瞬く間に現代ホラー映画界の寵児となったダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟。前作『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22)で高く評価された彼らの次なる長編は、オーストラリア発のホラー映画『ブリング・ハー・バック』(25)である。
本作『ブリング・ハー・バック』の製作の背景には、監督たちの劇的な決断があった。前作の世界的ヒットを受け、彼らはアクション大作『ストリート・ファイター』新作の監督に抜擢されていた。しかし、親しい人の子どもの死という喪失に直面した兄弟は、驚くことにその企画から降板する道を選ぶ。そして、深い悲しみと喪失感を題材にした、私的な感情を投影できる本作に集中することを選択したのである。

『ブリング・ハー・バック』© 2025 RACKAWAY PTY LTD All Rights Reserved
フィリッポウ兄弟のこれまでの強みであった、観客を力業で引きずり回すような、圧倒的なドライブ感。その作家性を知る観客であれば、当然そのような恐怖体験を期待して劇場へ足を運ぶだろう。だが、本作の仕上がりは、そうした事前の期待を裏切るような、意外なものとなった。
父の急死で孤児となったアンディと目が不自由な妹パイパーが、人里離れた一軒家に暮らすローラに引き取られることで、本作の物語は動き始める。かつて娘を亡くしたローラは善人に見える。しかし、そこで暮らしている言葉を発さない少年オリバーが奇妙な行動を繰り返しているなど、この家の不穏な面が見えてくるのだ。その不気味な空気を察知したアンディは、やがてこの家に隠された恐るべき狂気に直面することになる。
そんな恐怖の中心に横たわっているのは、“母親の愛”という、本来であれば無条件の善として描かれるような要素である。この、あまりにも純粋で、それゆえに他者を巻き込んでいく母親ローラを演じたのが、イギリスの名優サリー・ホーキンスである。本作での彼女は痛ましくも凄惨な表情をスクリーンに焼き付けている。