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『マイ・リトル・クイーンズ』故郷を離れゆく家族の感情を、優しく柔らかく照らし出した秀作

© 2024 ALVA FILM - INICIA FILMS - MARETAZO CINE – RTS

『マイ・リトル・クイーンズ』故郷を離れゆく家族の感情を、優しく柔らかく照らし出した秀作

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監督自身の経歴から見えてくるもの



 加えてこの映画は、作り手の思いを窺い知ることでより奥行きを増す。手掛けたのはこれが長編三作目となるクラウディア・レイニケ。彼女もまた10歳の頃に母国ペルーを離れ、その後、ヨーロッパやアメリカへ移り住んだ経歴を持っている。つまり、国を離れた頃は『マイ・リトル・クイーンズ』に登場する幼い少女ルシアとほぼ同じ年代だったことになる。決して自伝ではないが、それでも混乱から逃れるため故郷を後にした点では変わらない。


 人生においてチャンスを逃さず、より豊かな選択肢を掴み取る。当時としては、これはある意味で幸福な決断だったはず。しかしその後、時を経るごとに、自分のルーツとつながりたいとする思いは大きくなるばかりだった。


 あの頃、あまり実感なく離れてしまった故郷。自分にとって祖国での日々は一体どんな意味を持ち、そこを離れることで彼女は何を得て、何を失ったのか。本作は1990年代における家族のドラマでありながら、そこには現代から照射されたレイニケ監督のもう一つの目線が確かに存在する。かつて10歳の少女だった彼女はいま、映画監督として最も自分らしいやり方で故郷の地を踏み締め、ようやく里帰りを果たしているのだ。



『マイ・リトル・クイーンズ』© 2024 ALVA FILM - INICIA FILMS - MARETAZO CINE – RTS


 そう考えると、この映画におけるカルロスの存在は、もちろん主人公にとってのちょっと情けない父親でありながら、あの日、家族が別れを告げて後にしたペルーという国そのものとしても映る。


 たとえ人生で経済的な支えとなってくれることはなかったとしても、クライマックスの車内で父が柄にもなく口にする、「地に足をつけ、空を見上げれば、可能性は無限大だ」というセリフは、未来へと伸びる一筋の光のごとく力強く、美しい。


 それは二人のクイーンのみならず、今この瞬間、母国や故郷から離れて暮らす世界中のあらゆる観客の背中をも、そっと押してくれるものとなるはず。切実な時代背景、家族の別れの物語であったとしても、この映画にはやはり変わらぬ優しい風が吹いている。



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。




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『マイ・リトル・クイーンズ』

新宿ケイズシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中

配給:ブエナワイカ

© 2024 ALVA FILM - INICIA FILMS - MARETAZO CINE – RTS

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