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日常に干渉する幽霊たち
是枝裕和監督の映画には、いつも死者の気配が色濃く漂っている。
突然夫を失った妻の喪失を描く『幻の光』(95)。カルト教団のテロ実行犯の遺族たちが集う『DISTANCE』(01)。長男の死が家族を呪縛し続ける『歩いても 歩いても』(08)。父の死をきっかけに、四姉妹が新しい絆を育んでいく『海街diary』(15)。この主題は、息子を亡くした夫婦のもとに、生前の姿と瓜二つのヒューマノイドが届けられる『箱の中の羊』(26)でさらに先鋭化する。是枝作品において死者とは、生者の日常に干渉し続ける存在なのだ。
テレビマンユニオン時代、彼は「しかし… 福祉切り捨ての時代に」(91)という作品を発表している。これは、水俣病訴訟の矢面に立たされ、苦悩の末に自ら命を絶つ官僚を追ったテレビドキュメンタリー。ひとりの人間の死を通して、あとに残された者たちを見つめるスタイルは、キャリアの初期から確立していた。

実写映画『ルックバック』©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
そしてこのテーマは、最新作『ルックバック』(26)にも受け継がれている。原作は、「チェンソーマン」で知られる藤本タツキの読み切り漫画。少年ジャンプ+で公開されるやいなやSNSで爆発的な反響を呼び、瞬く間に250万ビューを突破。「このマンガがすごい!2022」オトコ編1位に選出されるなど、大きな話題を呼んだ。
学年新聞で4コマ漫画を連載し、自分の才能に絶対の自信を持っていた小学生・藤野は、ある日、不登校の同級生・京本の圧倒的な画力を目の当たりにして初めての挫折を味わう。激しい対抗心から猛烈に絵の練習に打ち込むものの差は縮まらず、一度は筆を折ろうとした藤野だったが、卒業式の日にひょんなことから京本と対面、ずっとファンだったと告げられたことを機に、二人はコンビを組んで漫画を描き始める…。
2021年に発表された原作漫画は、2024年に押山清高監督の手によってアニメーション映画化。そこから2年の時を経て公開された今回の実写映画版で、是枝監督は原作のエッセンスを大切に守りつつ、長年描き続けてきた死者というテーマへと、真正面から接続してみせたのである。